大陸はプレート説どおりに動いてはいない
話を大陸移動説からプレート説に戻します。
近年、大陸間の距離を正確に測ることが可能になり、「大陸はプレート説どおりに動いているのかどうか」が確認できるようになりました。
VLBIという超長基線電波干渉法を用いて米国ハワイ地域と茨城県鹿島地域の距離を測定すると、毎年6cmずつ縮まっているのですが、ハワイ地域とアラスカ地域間もわずかながら縮まっていることがわかりました。
つまり、ハワイと鹿島、アラスカの3地点の中心を軸として、プレートが「時計回りの回転」をしているのです。
プレート説が正しければ、プレートは常に大陸の方向に向かって動いていなければなりません。海嶺から生まれた新しい海洋プレートは、マントルの対流などの力を受けて移動し、大陸プレートと衝突する海溝に沈み込むはずなのですから。
しかし、ハワイと鹿島、アラスカでの観測結果は、プレート説のとおりにはならなかったのです。大陸はプレート説どおりに動いていないのです。
プレートはなぜ動いているのかわからない
プレート説には、ほかにも厄介な問題があります。
例えば、地球内部から湧き出てきたもともと1枚のプレートが、中央海嶺の頂上部で同じような厚さになって右と左に分かれるとしていますが、この仕組みもよくわかりません。
さらに「移動中に海洋の途中でなぜ沈まないのか」「同じプレートでも場所によって潜り込む角度に違いがあるのはなぜか」などの疑問が次々と出てきます。
なかでもプレート説にとっての最大の弱点は、「プレートはなぜ動くのか」という、ウェゲナーも悩んだ根本的な問いに対する解答がまだ得られていないことです。
プレートの運動は、主に海嶺から海溝に至る間のプレートの冷却による密度増大と、潜り込むプレートの引っ張り力によって生ずると言われていますが、海嶺に最初に湧き出したプレートが、どのようにして海底を移動したかをいまだにうまく説明することができないのです。
プレートを動かす力は、その下にある「マントルの対流」だと言われてきました。
地球の内部構造を簡単に説明すると、一番内側は鉄やニッケルなどの金属の固体でできた「内核」、その外側には金属が溶けて液体となった「外核」があります。
これらの外側に岩石でできた「マントル」があり、地球の表面は地殻で覆われています。
マントルは均一だと考えられており、外核から放出される熱が地殻近くまで上昇し、大気の対流と同じように、マントルが対流することでプレートが動くと言われてきました。
ところが、日本にプレート説を紹介した上田誠也氏がマントルが対流することでプレートが動くことを証明しようと詳細な計算を行ったところ、逆に「マントル対流の摩擦にはプレートを動かすだけの力はない」ことがわかってしまったのです。
このため、最近では「移動するのはプレートがその重さで自ら沈み込むためだ」とする能動的移動説が提唱されるようになっています。いわゆる「テーブルクロスずりおち説」です。
「海嶺付近で誕生したときには高熱で密度が低かったプレートは、移動に伴って冷却されて密度が高くなってマントル中に沈んでいく」というものですが、「沈み込む重いプレートの塊」が、「テーブルの下からテーブルクロスを引き下ろす」ような働きを本当にするのでしょうか。