日本政府に近い歴史認識の人物は公職につけなくなる?
大韓民国の成立は、敗戦により日本から解放された朝鮮半島がアメリカをはじめとする連合軍の統治時期を経たあとの1948年だとするのが一般的で、それが日本を含む国際社会の共通認識だ。金氏の発言はこの歴史観によるものである。
だがその一方で、日本統治時代の1919年に起こった独立運動まで遡るとする見方も韓国国内には一定数広がっており、共に民主党はこの立場をとっている。
したがって、戦前の朝鮮人の国籍を「日本」とする金氏の発言は、共に民主党の歴史観から見ると、1919年から45年まで存在していた大韓民国(臨時)政府の存在を無視した歴史歪曲にあたる。今回の騒動は、それを根拠にしたものだ。
ただ、この程度で話が終わるのであれば韓国国内での歴史認識論争で片づけられるのだが、そうはいきそうにない。
金氏への公聴会の2日後、共に民主党は「憲法不正および歴史歪曲行為者の公職任用禁止などに関する特別法」を発議した。これは事実上、朝鮮統治の歴史に関して日本政府に近い言動をする人物が公職に就くのを禁じさせようとするものである。だが、親日だと批判の矢面に立たされている尹大統領も「公職任用禁止」の対象になるため、この法案に対しては大統領が拒否権を発動する可能性が高い。
とはいえ、もしも次の選挙で共に民主党の政権が誕生すれば、似たような法案が提出・承認される可能性もある。また、韓国の場合「公職」には大学の教員も含まれることがある。そうなると、研究の場で自由な議論が妨げられることになるやもしれない。
では、政権交代の現実味はどれくらいあるのだろうか。