批判覚悟で積極的に社会的テーマを

 共同通信が5月にまとめた世論調査によると、「同性婚を認めるほうがよい」と答えた人は73%。また、「選択的夫婦別姓に賛成」という人も76%に達している。この2つの問いに対しては、どの世論調査も賛成が圧倒的多数だ。

 しかし、賛成意見が100%にならない限り、どんな問題も必ず反論が生まれる。このドラマに限った話ではない。それは悪い話ではない。ドラマについて自由に議論するのは自然なことだ。

 吉田氏も同性カップル問題と夫婦別姓問題への反論があることはあらかじめ分かっていたはずだ。それでも取り上げたのは声を上げられない人たちの意見を代弁するためだったのではないか。吉田氏はインタビューでこう語っている。

「今の私は、余裕がなくて声が上げられない人の代わりに、自分が的になっていきたい気持ちがあります」(『Woman type』5月22日)

 吉田氏はこうも言っている。

「私たちの日常は生きづらいことで溢れています。寅子が生きていた時代から改善されたこともあれば、続いていることもあるし、その当時はなかった悩みも増えている。『どうして自分たちだけがこんな想いを?』『このまま世界は最悪なままなの?』と頭を抱えてしまう。そんな人たちに『それでも全てを諦めない』『共に一歩ずつでも世の中を変えていこう』という気持ちで書いています」(NHK、3月26日)

 吉田氏がこのドラマに社会的テーマを積極的に盛り込み、「『虎に翼』無双」のような状態にしている理由が分かる。頭を抱えている人が将来を諦めずに済むようにしたいのである。批判も覚悟のうえなのだ。