寅子と航一という異性カップルと同性カップルを同時に登場させたことにより、観る側に異性愛と同性愛の法律上の不平等を考えさせた。SNS上には同性愛などを描いたことへの違和感を訴える意見も散見されたが、このドラマのテーマは憲法第14条「法の下の平等」。吉田氏としては性別に関する不平等の問題も避けて通りたくなかったのだろう。

仲間たちの「法を超える言葉」

 寅子と航一は入籍する代わりに遺言書を交換する。そこに2人が婚姻関係にあることも書き入れたが、遺言書の部分以外は公的には意味を持たない。

 代わりに寅子と航一に対し、法律を超越する言葉を贈ったのが、寅子の明律大法学部の同級生や先輩ら8人である。105回だった。8人は学生時代からの溜まり場である甘味処・竹もとに法衣姿で集まり、判決を言い渡す形で2人に次の言葉を捧げた。

朝ドラ「虎に翼」公式Xより
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「主文、それぞれの姓での婚姻関係を認める」「民法において夫婦はどちらかの姓を名乗ると決められているが、姓を変えることが夫婦どちらかの社会生活に不利益や不都合をもたらす恐れがあり、名前が変わることで自分が失われると感じる人もいる」「同じ姓を名乗るか、それぞれの姓を名乗るかは夫婦間で自由に決定すべきである」「それは憲法により保障された権利のはずである」「われわれの主張には法的効力はないが、これを2人への祝いの言葉とする」

朝ドラ「虎に翼」公式Xより
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 この描写にもSNS上には違和感の声が上がった。夫婦別性については日本弁護士連合会(日弁連)の渕上玲子会長(70)や経団連が選択的夫婦別姓制度の導入を求めているが、ドラマではまず取り上げないから、不意打ちを受けたように感じた視聴者もいたかも知れない。