国民に政治の実相を明らかにできるか

 これらは視聴者がぼんやり見ていても、何の抵抗もなく容易に受け入れられるネタです。夕方ニュースの放送時間が長く、埋めなければならないという事情は理解しつつも、枠が大きいからこそ、もっとできることがあるはずです。

 オリンピックでのメダル獲得や大谷選手のホームランを伝えるな、とは言いません。しかし、明るく楽しい話題ばかりではなく、問題意識を触発するテーマをもっと取り上げることがテレビジャーナリズムに求められていると思います。「野球しようぜ!」と日本全国の小学校に約6万個のグラブを贈った大谷さん風に言えば、「ニュースやろうぜ!」ということです。

 そんなテレビ報道のあり方を問うのが来たるべき自民党総裁選です。

 8月は戦争と平和について考える「鎮魂」の月と言われます。しかし、そんなことは関係なく、私利私欲、党利党略を優先するかのように、終戦記念日の前日に、岸田文雄首相が自民党総裁選への不出馬を表明しました。

 これを機にテレビでは総裁選にまつわる話題が一気に増え、しばらくニュースの中心になりそうです。国のリーダーを決めるプロセスでもあるので、テレビは視聴者に受けそうな話題ばかりを追うのではなく、国民に政治の実相を明らかにしなければなりません。

自民党総裁選に出馬が取り沙汰される顔ぶれ(写真:共同通信社)
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 読売新聞の「広角多角」というコラム(7月20日)で編集委員の吉田清久氏は、先の東京都知事選におけるテレビ報道について、「争点の掘り下げや候補者への切り込みが不足していた」と指摘しています。そのもどかしさによって「一部有権者がテレビからユーチューブに視聴先を変えたのではないか」と分析しています。