ブラックな「野球部監督」を敬遠する教員はいるのか

──田渕さんは約40年、野球部の指導をしてきました。野球部の監督には、練習での指導だけではなく、練習メニューの考案や予算管理、練習試合の調整など、さまざまな仕事があります。プライベートはほとんどなかったのではないですか。

田渕:そう聞かれると、そうやとしか言いようがない(笑)。そりゃぁ、野球が好きやというのはもちろん、生徒たちの成長を見るのが楽しみということしかない。

田渕監督は2年前から、定年退職後の再任用として高田高校で保健体育を教えている

──近年は教員の時間外労働に対する報酬(教職調整額)が一律という「定額働かせ放題システム」が批判の対象となっていますが、野球部の監督は特に長時間労働になりかねません。“ブラック”な野球部監督の労働環境を敬遠している先生が増えている、ということはありませんか?

田渕:そうした話は聞きませんねぇ。先ほども話したように、近年は奈良県でも公立高校が統廃合される流れにあり、野球部の数が減っています。それでも「野球部を指導したい」という先生方はたくさんおられます。

──そうした先生たちは、野球経験者が多い?

田渕:はい。知っている先生方は皆さん経験者です。

──プライベートがほとんどない中で、野球部の指導を頑張り続けられる原動力は、先ほど田渕さんがお話になったように、「野球が好き」「生徒の成長を見るのが楽しい」というところに頼るしかないのでしょうか。愚問だとは思うのですが、外から見ると「なんでそこまでやるのだろう」と疑問に感じる人もいるのだと思います。

田渕:そうやねぇ・・・うん、モチベーションはそういうことになるかな。

 ただ、どこの学校でもどの部活でも熱心な指導者はおられますし、若い先生も入ってきていますよ。確かに、教員の働き方や、生徒たちや保護者の方々のために変えていかなければならないこともあると思いますが。

 一方で役職や責任の負担が大きいことなどに対しては不満を持っている方もおられるかもしれませんね。

 それでも、教員も部員も「勝ちたい、野球が上手くなりたい」と思って毎日を過ごしている。その事実はこれからも変わっていかないと思いますよ。