「野球離れ」は単純にそうとも言い切れない

田渕:そんなに単純ではないと思うよ。そもそも、「野球離れ」が盛んに言われているけど、みんな野球を敬遠しているのかと言うと、そうでもないと思う。

 子どもの数自体が減ってきている分、部員数も当然減る。近年は高校の統廃合で野球部の数そのものが減少し、合同チームが増えてきた。でも、高校でも野球をやろうという生徒たちの熱量は高いままです。

公立高校の野球部も指導はハード。平日は担当する授業が終わった16〜17時から19〜20時まで練習する。土日は丸一日グラウンドで練習するほか、他校との練習試合もある。写真はランニングの様子を見守る田渕監督

 それと「若年層からの育成選抜」に関しても、一概には言えませんね。強豪校でもシニアリーグやボーズリーグ出身ではなく、一定数は中学の軟式野球部上がりの選手もいる。ただ、近年は中学校でも部員不足などから「体験に差が生まれる」という状況はあるかもしれません。

──奈良県においては、智弁学園や天理高校など、野球エリートが集まる高校が甲子園の常連です。普通の公立校が甲子園(夏の大会)に出場したのは、2013年の桜井高校が最後。部員にとって公立校で野球を熱心にするモチベーションは、どのようなところにあるのでしょうか。

田渕:(甲子園出場の)チャンスはゼロではないわけやから、みんな甲子園に出たいと思って練習している。野球をやっている限り、少しでも上手くなりたい、1試合でも多く勝ちたいという気持ちが大きい。

 もうひとつは仲間の存在。例えば、高田高校では『制限タイム付き200mインターバル走』というトレーニングがある。自分1人ではくじけそうになるが、周りの仲間の頑張り、盛り上げる声などにより、全員でやり遂げられる。