共和党と民主党、二大政党はこう生まれた

 この民主共和党が今日の2大政党の源流で、19世紀の初めにまずは今の民主党が、続いて19世紀半ばに反奴隷制を旗印に共和党が誕生します。

 民主党をつくったとも言われる第7代大統領のアンドリュー・ジャクソン(任期:1829~1837年)は、とにかく大衆に人気がありました。

「選挙権をいろんな人に広げよう!」
「連邦政府の中央集権は州の自治制が妨げられてよくない。国にコントロールされるんじゃなく、各州が自分のことは自分でやれるようにしよう」
「他の国と貿易をして、経済を発展させて強い国にしよう」

 こんな政策を次々に繰り出す彼を支持した“大衆”とは、“エリート”と対比した場合の大衆であり、そこにマイノリティや黒人、貧困層、女性は明確な形では含まれていませんでした。

「ゴーウエスト! 米国を西へ広げてでっかい国にしよう」というのは大衆に大歓迎されましたが、ジャクソン大統領は「……というわけで先住民はさっさと引っ越してね。えっ、先祖代々の聖なる土地だからイヤ? そんなのこっちは知らないもんね!」と、ネイティブアメリカンの強制移住を断行。絶望した先住民が居住区に向かうルートは「チェロキー涙の道」と呼ばれ多数の死者が出ました。ジャクソン大統領は自身も奴隷所有者であり、奴隷制にも賛成でした。

「みんなのための国をつくりたいけど、そもそも黒人は“みんな”じゃないよね?」

 今も昔も、“みんな”の定義はかなり主観的なもののようです。(続く)

山中俊之(やまなか・としゆき)
著述家/芸術文化観光専門職大学教授

 1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。
 2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。
 著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。