引退後のセカンドキャリアはさらに厳しく

 さらに厳しいのは引退後のセカンドキャリアです。

 2014年の調査ですが、笹川スポーツ財団が五輪出場経験のある965人を対象に実施した調査によると、選手1人の年間経費は、夏季大会の男性が206.2万円、女性が250.7万円でした。冬季大会はさらに高く、男性が245.4万円、女性が460.9万円です。

 それだけ自己投資したにもかかわらず、引退後に正規雇用に就けた者は半数にとどまりました。引退後の年収も「300万〜450万円」が最多。引退の年齢は男性31歳、女性26歳ですから、一部の超トップアスリートを除けば、第二の人生も相当に厳しい状況にあることは想像に難くありません。

 パリ五輪での日本選手の活躍には、多くの日本人が励まされたことでしょう。しかし、そうした選手の活動を支えるには報奨金の多い少ないではなく、日ごろの練習環境や日常生活、将来設計なども含めたサポート体制を根本的に再考する必要がありそうです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。