副大統領が担う重要な役割とは
副大統領の存在は大統領ほど目立ちませんが、重要な役割を持っています。副大統領は大統領を補佐するだけでなく、連邦議会上院の議長を務めることも合衆国憲法で決まっているからです。
合衆国の建国当時、大統領選は1位が大統領、2位が副大統領になるという単純なルールでした。ところが、2人が得票同数で1位になる例が出て、大統領と副大統領の選挙は別々に行うことになりました。19世紀の南北戦争などを経て、政治の統一性を図る狙いから、各党が正副大統領候補をセットで擁立する現在のスタイルが定着したのです。
20世紀半ばまで、副大統領の主な仕事は上院の議長職でした。定数100の上院で採決の時に可否同数となった場合に議長である副大統領の1票で決着する。それが主な役目だったのです。やがて大統領の職務が増えて広範になるにつれ、正・副大統領の役割分担が必要となり、副大統領の仕事は行政府に重心を移していきます。
副大統領として力を発揮した中には、国政経験が乏しかったカーター大統領(1977〜1981年)の下で外交・安全保障政策を担ったモンデール氏、気候変動問題に携わったクリントン政権(1993〜2001年)のゴア氏、9.11テロ後に保守派「ネオコン」のまとめ役となったブッシュ(子)政権(2001〜2009年)のチェイニー氏などが挙げられるでしょう。
一方で、大統領の足を引っ張る結果になった例もあります。ブッシュ(父)政権(1989〜1993年)のクエール副大統領は「ポテト」という単語のスペルを間違えるなど首を傾げたくなる言動を繰り返し、資質が問われ続けました。2008年の大統領選では、共和党のマケイン候補によって副大統領候補に選ばれた女性のペイリン氏が的外れな発言を繰り返して人選ミスを指摘されました。