「切り札」と言われる3つの理由

 ペロブスカイトとは、メチルアミンと鉛、ヨウ素という物質が一定の条件で作り出す結晶構造です。その構造を持つ化合物は太陽光エネルギーを電力に換えることが知られています。研究開発に尽力したのは、宮坂力・横浜桐蔭大学大学院教授で、ノーベル化学賞の有力候補とも言われています。ことし7月24日には日本学士院賞を受賞しました。

ペロブスカイト太陽電池を開発した桐蔭横浜大の宮坂力特任教授=2023年9月撮影(写真:共同通信社)

 なぜ、ペロブスカイト太陽電池が「次世代太陽電池の切り札」と言われるのでしょうか。

 1つ目の理由は「低コスト」にあります。この太陽電池はペロブスカイト結晶構造を特殊なフィルムなどに塗ったり、印刷したりして作ることができます。

 製造工程が少ないため量産化と低コスト化が可能。経済産業省は2030年までに1kW当たりの発電コストを14円以下とする目標を掲げ、総額2兆円規模のグリーンエネルギー基金のうち、最大規模の648億円をペロブスカイト太陽電池の実用化に充てる方針です。

 2つ目の理由は、軽量で柔軟という物質の特性にあります。シリコン系太陽電池が重くて厚みがあるのに対し、ペロブスカイトは小さな結晶の集合体が「膜(シート)」になっているため、軽く、折り曲げもできます。ごく小さなサイズにすることも可能。このため太陽電池シートが実用化されれば、多様な用途が期待できます。

 3つ目はペロブスカイトに欠かせないヨウ素の主産地が、日本であること。生産量首位のチリはシェアの6割を持っていますが、日本も3割。そのため、原材料の供給を他国に頼ることなく確保でき、経済安全保障の面でも大きな懸念はありません。