写真示し民間業者に“虫取り”依頼

 海底ケーブルには民間の通信用や地震観測用、さらには先述通り軍用でも通信用と対潜水艦用がある。ケーブル中心部に細い毛髪の束のように存在するのが光ファイバーケーブルで、これが超高速大容量通信を支えている。

 海洋進出に力を入れる中国では近年、海底資源の有無をはじめ、海の情報収集を活発化させている。そうした中で報じられたのが、沖縄近海の光ファイバー海底ケーブルから中国製盗聴装置が発見されたというニュースだった。

在沖縄米軍向け英字誌「This week on OKINAWA」2023年6月4日号
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 その一報を報じたのは在沖縄米軍向け英字誌「This week on OKINAWA」2023年6月4日号。1955年から発行されている同誌の情報に米軍関係者らも強い関心を示しており、筆者も同号の発行直後、米軍周辺者から同誌報道の情報を得た。

 これを受けて筆者は台湾発の電子メディア「The News Lens JAPAN」でこの問題を取り上げたところ、さらに反響は大きくなり、日本の安全保障問題の大家らも相次いで「海底ケーブルは衛星とともに、有事を見据えて防護されるべき通信インフラ」だとして、その重要性を訴えるようになった。

 筆者は今回、2018年当時、総務省の要請にもとづき沖縄の海底ケーブルの保守点検を実施した大手民間電気通信事業者のOBに取材をかけた。

 このOBは当時の経緯をこう語る。

「盗聴装置は“虫”と呼ばれ、担当者が総務省職員から海底ケーブルに設置された中国製盗聴装置のサンプル写真を見せられたうえで、“虫取り”を念頭に保守点検を強化するよう要請があった。私もそれを見たが装置は黒く四角い形状で人が抱えて運べる程度の大きさだった」