しかし、日本の海底ケーブルが陸上にあがる地点「陸揚げ局」の多くは太平洋側にあり、その集中地点も秘匿されておらず、外部の視線にさらされるなど脆弱であることは筆者が沖縄・勝連半島で確認した通りだ。

 南海トラフ巨大地震の可能性など、災害への備えから、日本海側への分散などは国の検討俎上にあるが、こと有事の際の攻撃(破壊工作など)の対象となる点に関しては、多くが民間の所有のため、業者任せとなっているのが実情だ。

「有事の際のターゲット」は国際的常識

 ただ、各国の情報機関が海底ケーブルを狙って盗聴し、情報収集するのは電話線の時代から行われてきた。その応酬は米ソ冷戦時代から現代に至るまで変わりはない。最近では米国の国家安全保障局(NSA)と、同中央情報局(CIA)の元局員で、NSAによる国際的監視網(PRISM)の実在を告発してロシアに亡命したエドワード・スノーデンが、米国政府による海底ケーブルを使った情報収集活動も暴露している。この海底ケーブル事業には中国のファーウェイ・マリーンなども参入していた。

 海外では「安全保障」の観点から海底ケーブルの防護強化に取り組むところも少なくなく、米国では海底ケーブル計画に政府が関与したり、陸揚げ局の詳細を秘匿したりするなど慎重な姿勢で、英国でも海中監視用の船舶を建造するなど意識の高さをうかがわせている。

 日本の大手民間通信事業者OBは「日本でも民間任せにせず、国を挙げて防護、管理体制強化を進め、状況によっては価値観を共有する近隣国・地域とも協力する必要がある」と訴えるが、それももっともな言い分だ。