光信号増幅装置から漏れる電磁波
一方、民間通信事業者に“虫取り”を発注した総務省の元職員の証言も、前出OBの話を裏付ける内容だった。
「自分は総合通信局に所属していなかったため、中国の盗聴装置自体の写真は見たことがなかったが、海底ケーブルに中国の盗聴装置が仕掛けられた事実は知っていた」
しかも同元職員は、仕掛けられたことが一度だけではなかった、ということも示唆した。
通常、光ファイバーケーブルの信号を盗聴することは技術的に困難とされているが、海底ケーブルには一定区間ごとに光信号増幅装置が設置されており、ここがウイークポイントとなる。民間電気通信事業者OBも、「(海洋調査船などを使って盗聴装置を設置したであろう中国は)この増幅装置から漏れる電磁波を盗聴し、情報を解析していたと思われる」と指摘する。“虫取り”依頼を受けた際に総務省は示したサンプルの盗聴装置も増幅装置に取り付けられていたものだったという。
日本の通信は99%が海底ケーブル
沖縄では1896(明治29)年に鹿児島との間で海底電信線が敷設されたのを皮切りに、翌1897年には石垣島経由の台湾線、1905年には南洋ヤップ島線が敷設され、第二次大戦で破壊されるまで陸揚げ地点の読谷村渡具知が島外との連絡、中継の重要地点だった。
今日、沖縄近海における主要な通信網としては、NTTをはじめ、KDDI、AT&T、さらに米軍による光ファイバー海底ケーブルなどがあり、沖縄ではこれによって離島や日本本土をはじめ、他のアジア諸国・地域、グアム、ハワイ、オーストラリアなどと情報通信を行っている。
世界全体での海底ケーブル通信網の総延長は150万キロメートルで地球約37周分。インターネットや電話、放送をはじめ、軍事利用まで通信の約95%がこれに依存しており、人工衛星通信の割合はごくわずかだ。特に島国の日本ではほとんどの通信を海底ケーブルが担っている。
海底ケーブルメーカー大手のひとつNEC公式サイトによると、「国際通信などの大陸間を結ぶ光海底ケーブル通信システム」に関しては、「深海8000mの水圧に耐え、1万km以上の伝送が可能です。通信容量が非常に大きく、遅延も少ないため、現在では衛星通信に代わり国際通信の99%を光海底ケーブルが担っています」という。「これら海底機器は、深海で25年もの長期間にわたり、正常に稼働し続けることが絶対条件となっています」とインフラとしての重要性を強調している。