活発化する中国の対外情報収集活動
中国による活発な対外情報活動は西側諸国の脅威となっている。
2023年2月には、複数の無人偵察気球が米国やカナダ上空に飛来し、米軍機が撃墜する問題も発生した。中国側は気象観測目的の民間の気球だと主張したが、撃墜後に調査した米国は、複数のアンテナやセンサーを動かすために必要な電力を供給するためのソーラーパネルが搭載されていたことを確認し、米政府高官は「携帯電話などの位置を特定し、データを収集する能力がある」などと指摘した。
この気球に関しては日本の防衛省も昨年、米国の事例をもとに、2019年11月に鹿児島県薩摩川内市、2020年6月に仙台市、21年9月に青森県八戸市の上空でそれぞれ確認された気球が、中国の無人偵察気球であると強く推定される、と発表した。その場合は領空侵犯に該当するとして、遅ればせながら外交ルートを通じ、中国政府に事実関係の確認を求め、領空侵犯は断じて受け入れられない、と申し入れる一幕もあった。
情報活動に詳しい元陸上自衛官のひとりはこう語る。
「軍事上の絶対的な機密に関する通信には衛星が使用されている。ただ、それでも中国が民間やマスコミ、その他の通信を傍受することは脅威のひとつだ」
日本は、自国の情報通信インフラの脆さについてほとんど認識されていない。元自衛官が指摘するように、いまこそ官民あげて意識を改める必要性がある。
【吉村剛史】
日本大学法学部卒後、1990年、産経新聞社に入社。阪神支局を初任地に、大阪、東京両本社社会部で事件、行政、皇室などを担当。夕刊フジ関西総局担当時の2006年~2007年、台湾大学に社費留学。2011年、東京本社外信部を経て同年6月から、2014年5月まで台北支局長。帰任後、日本大学大学院総合社会情報研究科博士課程前期を修了。修士(国際情報)。岡山支局長、広島総局長、編集委員などを経て2019年末に退職。以後フリーに。主に在日外国人社会や中国、台湾問題などをテーマに取材。東海大学海洋学部非常勤講師。台湾発「関鍵評論網」(The News Lens)日本版編集長。著書に『アジア血風録』(MdN新書、2021)。共著に『命の重さ取材して―神戸・児童連続殺傷事件』(産経新聞ニュースサービス、1997)『教育再興』(産経新聞出版、1999)、『ブランドはなぜ墜ちたか―雪印、そごう、三菱自動車事件の深層』(角川文庫、2002)、学術論文に『新聞報道から読み解く馬英九政権の対日、両岸政策-日台民間漁協取り決めを中心に』(2016)など。日本記者クラブ会員。日本ペンクラブ会員。ニコニコ動画『吉村剛史のアジア新聞録』『話し台湾・行き台湾』(Hyper J Channel)等でMC、コメンテーターを担当。