どの競技を実施するかは多数決で決まる

 ところで、パリ大会を前に「あれ? 野球は競技から外れたのか」「東京五輪では実施された空手がなくなっている」などの点に気づいた人も多いでしょう。実施競技はどのようにして決まっているのでしょうか。

 五輪の競技についてはオリンピック憲章に定めがあり、現在は2023年10月改訂のものが最新版です。それによると、実施競技は原則として大会の7年前までに国際オリンピック委員会(IOC)の総会で多数決によって決定されます。実施競技は一括して採決にかかり、その後、各競技の国際組織との調整を経て見直しの必要があれば大会開催の3年前までに再協議することになっています。

 IOCは現在、陸上や水泳、フェンシング、ボクシング、テニス、卓球、射撃など28の国際競技団体を認定。これらの団体が統括する競技は夏季五輪の定番として毎回実施されています。

 ただ、この枠組みは2014年のIOC総会で大きく変更されました。それまでは五輪憲章で「28競技まで」と定められていた競技の上限を撤廃。開催都市は、自らが実施したいと考える競技を追加提案できるようになったのです。

 近年の五輪は規模が大きくなり、開催地の負担は回を追うごとに厳しくなっています。このため、開催を希望するのは一部の大都市に限られる傾向が強まっており、IOC関係者の間では「このままでは立候補する都市がなくなってしまうのでは」との危機感が増幅していました。

 一方、スポーツは競技の種類によって競技人口や人気が偏在しています。こうしたことからIOCは開催都市に提案権を与え、都市が立候補しやすい環境を整えたのです。