今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

「あなたの好きな剣豪は?」。

 そう問われ、歴史好きのみならず多くの人々が一番にその名が挙げるのが、江戸時代初期の剣術家・宮本武蔵。演劇・小説・漫画・映画など様々な創作の題材となっているだけでなく、剣術の奥義を著した兵法書『五輪書』は世界各国でベストセラーとなり、アスリートの愛読者も多いことで知られる。

 そして、そのタイトルにある“五輪”といえばアレ。1000年に1人の美少女と話題になった橋本環奈。100年に1度訪れるという大地震。50年に1度咲く花とくれば竜舌蘭。そして4年に1度の熱い夏。そう、世界最高峰のアスリートたちが競い合うスポーツの祭典、7月26日から17日間に渡ってフランス・パリで開催されるオリンピックの別名に他ならない。

 ちなみに五輪という言葉には、世界の5大大陸を表すだけでなく、“仏教の万物を構成する地・水・火・風・空のエレメントが揃う世界の最高の舞台”という意味も込められているそうだ。そんな世界最高の舞台に向けて、世界中で盛り上がるスポーツ熱とその余波に乗り、取り挙げるテ−マは“五輪競技にまつわるスニーカー”。

 どれも快適な履き心地と情熱が込められた金メダル級の5足がエントリー。13歳から29歳までの60余度の勝負において無敗とされる宮本武蔵よろしく、ここで紹介するモデルを履けば、この夏は当然負け知らず。

 

1. adidas Originals「PREDATOR 94」

スニーカー¥19,800/アディダス オリジナルス(アディダスお客様窓口)

名品スパイクの生誕30周年を祝い、タウンユースにアップデート

 パリ2024オリンピックは開会式の2日前、現地時間15時に行われるサッカー・男子一次ラウンド-グループCで幕を開ける。ゆえに本稿の1足目もサッカーにまつわるこちらがふさわしいだろう。

 1994年に開催された、FIFAワールドカップ アメリカ 1994 大会で、ゴールを量産すべく開発されたサッカースパイク「プレデター」。その最大の特徴が、キック時の威力とスピンを向上させるためにアッパーに搭載されたラバー製フィンとサメの歯を想起させる独特のスリーストライプス。

 その始祖たる初代モデルが今年で発売30周年を迎えるのを記念し、シュータンを脱着自在なフォールディングタンに、ソールは凹凸のあるグリップパターンへと変更し、タウンユース用にリデザインしたのが本モデルだ。この機会に、サッカーシャツを取り入れたブロークコアスタイルに挑戦してみるのも一興かと。