おじさんライバーのめぐる季節

「ネットで募集していたライバーのサクラを雇うオンライン面接みたいなのも受けたことがある。その時に『いつか独立してライバーとして稼ぎたい』っていう話をしたら、『そんなのムリムリ』と笑われた」

 Fさんは悔しそうに語る。そういうわけで、Fさんは誰にも頼らずライバーとしてやっていくことにしたのだという。

 ライバーを始めてから半年が経つが、フォロワーは10人もいない。月に数万円でも稼げるようになるには遠いだろう。それでもFさんはなるべく毎日配信をしている。

 Fさんの夢は笑われるものなのか。中島みゆき流に言えば、「戦わない奴らが笑う」ことになるのかもしれない。

 Fさんは今、朝3時間ほどポスティングの仕事をしている。近所を回って外食チェーンや不動産屋のチラシを個人宅のポストに入れる仕事だ。それが終わると三脚付き自撮り棒にスマホを指して、ショッピングセンターへと向かう。

 今日は配信で、お気に入りの松山千春の『季節の中で』を歌った。

「毎日欠かさず配信していたら、いつかスカウトがくるかもしれませんね」

 そう言ったら、

「いやあ、なかなか難しいと思うよ」

 とちょっと嬉しそうに笑うFさん。

 おじさんが生きるために必要なのは、お金だけではない。尊厳や希望がなければ、明日はない。

 めぐる、めぐる季節の中で、あなたは何を見つけるだろう──。

 松山千春、いやライバーFさんは、今日もショッピングセンターの片隅で歌い上げる。

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若月澪子(わかつき・れいこ)
NHKでキャスター、ディレクターとして勤務したのち、結婚退職。出産後に小遣い稼ぎでライターを始める。生涯、非正規労働者。ギグワーカーとしていろんなお仕事体験中。著書に『副業おじさん 傷だらけの俺たちに明日はあるか』(朝日新聞出版)がある。