オモテナシはカラオケ

「基本的には、歌とトークだね」

 さだまさしみたいである。Fさんは天気や最近話題の時事ネタなどを話し、その合間に歌を披露するという。

 ライバーの生配信は、「Pococha(ポコチャ)」「17LIVE(イチナナ)」などライブ配信のアプリから見られる。こうした配信を覗くと、コスプレをした若い女性やイケメンDJ、歌う中年女性、ギターを弾き語りの中年男性など、あまたのライバーに出会える。

ライバーは若い女性が多いが、おじさんもいるにはいる。おじさんはだいたい歌っている
ライバーのスクショ

 フリートークやリスナー(視聴者)からのメッセージを紹介するスタイルが多い。ほとんどのライバーはワンショットで、こちらが見始めると「○○さん、いらっしゃい」とリスナーの名前を呼んでくれる。見知らぬスナックに入店したような感覚だ。

 ライバーの収入は、リスナーからの「投げ銭」。アプリ運営者に手数料を差し引かれた半分以下がライバーの取り分となる。

 ライバーの中には数十万人のフォロワーを抱え、数万~数百万円のまとまった収入を稼ぐ人もいるが、そのほとんどが若い女性。並み居る猛者を抑えて素人のおじさんがトップライバーとして一攫千金を狙うのは、見果てぬ夢である。

 Fさんの配信は、一人暮らしの自宅アパートから行う。だが最近は猛暑に耐えられず、エアコン代の節約のために涼しい場所に移動している。

「6月下旬くらいから、自宅から徒歩20分くらいのところにあるショッピングセンターから配信している。ここは涼しいから」

 Fさんが配信するのはお昼前後。ショッピングセンター内にある、テーブルと椅子が並ぶフリースペースの隅を陣取る。平日の昼はショッピングセンターも空いていて、Fさんがスマホに向かってごにょごにょ話していても、目立たない。

 ライブでは1~2時間を世間話と歌でつなぐ。ただ、おじさんの顔を1時間以上眺め続けるほど、リスナーも暇ではない。Fさんの配信も、訪問者が数人いればいいほうだ。

「リスナーがいれば配信も楽しいけれど、誰も聞いていないこともあるしね」

 それでもFさんはスマホに向かって語り、歌う。途中でトイレに行きたくなっても我慢する。

「歌は福山雅治と中島みゆき、あとは松山千春かな。いい歌ばっかりだよね。福山雅治の『流れ星』は最高だよ」

 ショッピングセンターで歌っていて大丈夫なのか。

「歌う時はショッピングセンターのバルコニーに移動してる。イヤホンマイクでカラオケを流して歌うの」

 おじさんライバーが歌う中島みゆきは、場末のスナックそのものである。

「昔、カラオケ機材の営業をやっていたことがあるのだけれど、設置した時にテストで1曲歌うこともあった。上手いですねって取引先から言われたよ」