冒頭の言葉のように、学生たちはタメ口で話してくるし、感情をストレートにぶつけてくる。他の講師に比べたら学生たちと年齢が近いので、高校の先生に対するような感覚なのだろう。タメ口は全然オッケーだ。ただ、退屈な時は本当に退屈そうにされるので、変な汗をかく。なんとか学生を退屈させないように、手を変え品を変え、K-POPにまつわる雑談や時事ネタを合間に挟みながら、学生の注意を引こうと奮闘している。

 学生が良い反応を示してくれる時は素直に嬉しい。やりがいを感じる。授業自体は楽しく教えている。「韓国語を学びたい」と大学にやってきた学生に教えるのは幸せなことだ。自分の持っている知識を存分に伝えたいと思っているし、教えているこちらが学ぶことも多い。こちらが韓国語の綴りを少しでも間違えようものなら鋭く指摘されるので、授業中は全く気が抜けない。

「“推し”の言ってることを理解したい」

 初回の授業では、自己紹介とともに、「なぜ韓国語を勉強しようと思ったのか」を学生一人一人に話してもらった。驚いたのは、受講生ほぼ全員が「K-POP」を理由として挙げたことだ。誰かしらの「推し」がいて、「推しの言ってることを理解したい」というのが受講の主な理由なのだ。K-POPアイドルの影響力を思い知らされた。

 大学1、2年生は2000年代中盤に生まれている。日韓で人気のK-POPガールズグループ「TWICE」(トゥワイス)が登場したのは小学校高学年のときである。僕が「TWICEが好きだ」と話すと、ある学生は「小学生の時にTWICEの曲に合わせてよく踊っていた」と話してくれた。

 つまり、小学生の頃からK-POPが身近にある世代ということだ。TWICEやBTSなどが活躍した「第3次韓流ブーム」が直撃した世代である。彼女たちにとっては「推し」が話す韓国語を学ぶのは自然な選択だったのだろう。

韓国の仁川国際空港からラスベガスに向けて出発するTWICE(資料写真、2024年3月14日、写真:アフロ)