それに対して、「歴史」と答えた学生は一人だった。ひと昔前、1992年生まれの僕よりも一つ前の世代ならば、韓国語を学ぶのは歴史に関心のある学生が多かったはずだ。このあたりは時代の流れなのだろう。現在はK-POPや韓国ドラマ・映画がきっかけで学ぶ人が圧倒的多数なので、むしろ自然である。

 とはいえ、文化を楽しむためには歴史の知識は必要になる。大事なことは少しずつ伝えていこうと思っている。例えば、最近の授業では「6月25日はなんの日か知っていますか」と学生に聞いた。誰も答えられなかったので、ニュース映像を見せたうえで、「この日は朝鮮戦争が始まった日なのです。韓国ではこの日付は誰でも知っています。大切な日なので覚えておいてください」と伝えた。

韓国と出会い始めた学生たち

 最後に、僕がどういう気持ちで韓国語を教えているのか、少し面映ゆいが、書き残しておこう。

 日本生まれ、日本育ちの僕は、韓国語を学んだおかげで、自分の世界が広がった。小さい頃から面白い韓国映画をたくさん見てきたことは貴重な財産だ。K-POPが大好きなのは何度も書いてきた通り。これらはライターとしての仕事、大学院での研究にも繋がっている。韓国留学を通じて、韓国人の友人が何人もできた。韓国語との出会いがなければ、今の自分は全く違ったものになっていただろう。

 韓国語を学び始めた学生たちはいま、まさに韓国と出会い始めたのである。その出会いが良いものであることを僕は願っている。韓国語を学ぶことを通じて、自分の世界を広げていってほしい。そのためであれば惜しみなく手助けをしたい。そう思って、僕は教壇に立っている。