また、「なだしお」の乗組員は救助もせずにただ眺めていただけだった、という証言も飛び出した。救助した人数は民間タンカーの19名に対して「なだしお」は3名だった。

海上自衛隊幹部らの手によって棺が納められた(写真:橋本 昇)
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最敬礼で棺を見送る海上自衛隊員たち(写真:橋本 昇)
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 海上自衛隊自衛隊横須賀総監部は詰めかけたマスコミで騒然としていた。次々に質問が飛ぶ。「乗組員が救助しなかったと言われていますが?」。自衛官は「それはまだ確認しておりません」の返答を繰り返すだけだ。しかし、その顔からは「とんでもないことが起きてしまった」という苦渋が伝わってきた。

そこのけそこのけ自衛艦が通る

 以前からこの海域での自衛艦の評判は悪かった。

 久里浜の釣り船の船長は言う。

「客の釣果より何より安全が一番。だけど浦賀あたりは水域が狭く釣り船も集中する。気がついたら大型船が迫って来ていてヒヤッとするなんてこともあるよ。特に自衛隊は国を守っているという意識が強いからね。遊んでいるお前らの方が避けるのは当たり前って感じだな。そこのけそこのけ自衛艦が通るってな」

 他からも自衛艦が横暴で危険な航行をしていても回避するのはこちらの責任という話は聞いた。その挙句がこの事故だった。

横須賀は米第七艦隊所属空母やイージス艦、原子力潜水艦が頻繁に出たり入ったりする軍港でもある。写真は当時横須賀を母港とした空母ミッドウェイ(写真:橋本 昇)
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