生成AIの存在がオフィスの潤滑油になる日が来るかもしれない(写真:saijul islam/shutterstock)生成AIの存在がオフィスの潤滑油になる日が来るかもしれない(写真:saijul islam/shutterstock)
  • ビジネスの場では、多様性のあるチームの方がパフォーマンスを発揮するという研究は数多い、
  • それでは、男性メンバーに偏ったチームに、AI女性メンバーを加えたらどうなるのだろうか。
  • 米コーネル大学の研究者などが発表した驚きの研究とは。

(小林 啓倫:経営コンサルタント)

世界経済フォーラムが下した評価

 今年4月に始まった、NHKの連続テレビ小説「虎に翼」が人気だ。主人公・猪爪寅子(いのつめともこ)のモデルとなったのは、日本初の女性弁護士である三淵嘉子さん。彼女が司法の世界で奮闘する姿を通じて、性別をめぐる日本社会のゆがみや課題を描いている。

 とはいえ、女性の社会進出だけにフォーカスしているわけではなく、男性も含め、社会的に弱い立場に置かれた人々に光を当てる内容となっており、各所から高い評価を受けている。

 一方で、日本のジェンダー問題はまだまだ根深いというのが実情だ。

 WEF(世界経済フォーラム)は毎年、世界各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」を発表しているのだが、その2024年で日本は146か国中118位という成績だった(もちろん、順位が高ければ高いほど男女平等が進んでいるという意味である)。

 昨年度の125位からは改善されたものの、G7の中では最下位であり、経営層や管理職になる女性が依然として少ないという課題が指摘されている。

 女性の社会進出が求められているのは、単に「それが道徳的に望ましいことだから」という理由だけではない。ビジネスの場では、男女混成のように多様性のあるチームの方がパフォーマンスを発揮するという研究が数多く発表されている。

 たとえば、ハーバード大学の調査によれば、男女の比率が均等なチームは、男性優位のチームよりも売上高と利益において良い結果を出すという結果が出ている。逆に女性比率が低いチームは、男女比のバランスが取れたチームよりも売上高が低く、利益も低い傾向が見られたそうだ(ちなみに、女性比率の方が高くなると、これらのパフォーマンスと女性比率の関係は横ばいとなったとのこと)。

 残念ながらこの研究では、なぜ男女比が均等なチームのパフォーマンスが高いのか、そのメカニズムは解明されていない。メンバー間の衝突、友情、意思決定、雰囲気、学習、相互のチェックといった要素はすべて、グループの男女構成とは無関係であることが分かったそうである。

 ただ、いずれにしても女性を加えた方が売上高も利益も改善できるのであれば、企業としてそれを追求しない手はないだろう。

 もっとも、チームの多様性を上げるといっても「言うは易く行うは難し」の最たるものだ。

 行動経済学の権威として知られるダン・アリエリーらが行った別の研究によれば、架空のスタートアップ企業のウェブサイトを作成して求人広告を掲載したところ、「人種/民族と性別の両方で多様性が高いことを示した組織」に応募が増加するという傾向が見られたとのことだ。

 これは当然と言えば当然の話で、マイノリティの立場にある人々からすれば、最初から多様性の高いチームに参加したいと思うもの。わざわざ多様性の低い企業に参加して苦労し、そのパフォーマンスを改善する義理など、求職者の側にはない。

 したがって多様性の低い組織はいつまでも低いままであり、それがさらに求職者の足を遠のかせるという、悪循環が発生していることが考えられる。

 そんな組織にとって、注目すべき研究結果が発表された。生成AIを使い、合成された女性の音声で人間のチームメイトとコミュニケーションする「AI女性メンバー」を用意し、それをオンライン上でのチーム作業に参加させたところ、女性メンバーの参加率が改善されたというのである。