生成AIが疑似的に高めた組織内の多様性

 まず全体として、男性の被験者には、チームでのディスカッションにおいてより積極的に参加し、より多くを話し、より多くのアイデアを提供する傾向があった。一方の女性被験者については、チームワークをより負担に感じ、チーム討議中に話すことが少ないという傾向が見られたそうである。

 では、AIエージェントの性別はどのように影響したのだろうか。

 まず女性については、性別上で少数派となった場合に、女性の声のエージェントがチーム内にいると、より多くのアイデアを出して、議論にも積極的に参加するという傾向が見られたそうである。この傾向は特に、性別が関係するタスクにおいて顕著だったそうだ。

 一方で少数派となった場合の男性メンバーは、女性のエージェントがチームにいる場合により多く話す傾向が確認されたものの、その多くは社会的な話で、実質的なアイデアの貢献は少なかったとのこと。

 これらの結果を受けて研究者らは、ジェンダー上の調整がなされた音声エージェントは、チームのダイナミクスに影響を与え、ジェンダーバランスの悪いチームにおいてマイノリティメンバーをサポートすることができると結論付けている。

生成AIのメンバーでもチームの多様性向上に貢献するようだ(写真:LightField Studios/shutterstock)生成AIのメンバーでもチームの多様性向上に貢献するようだ(写真:LightField Studios/shutterstock)

 この実験は音声エージェントがAIであることを隠した状態で行われており、AIだと明らかにした場合に同じ効果が得られるかどうかは確認されていない。実際にはAIであることをずっと隠し続けるわけにはいかないだろうから、そもそも最初からAIであることを明かした上で各種のタスクを支援することになるだろう。

 その場合、AIの意見や指示を重視しない、または逆に過度に頼るといった行動が生まれて、今回の実験結果とは異なる影響が見られるようになるかもしれない。

 とはいえ、今回の実験結果は、生成AIが組織内の多様性を「疑似的に」高められる可能性を示すものだ。