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 組織変革に苦慮する企業は少なくない。だが、組織刷新に着手して6年で売上を約2倍、労働生産性を約3倍にした企業が存在する。遊技事業を中軸とする中堅企業メッセだ。2021年から3年連続で「ベストモチベーションカンパニーアワード」で日本一を獲得し、現在は事業多角化を推進する。同社はいかに「組織のトランスフォーメーション(X)」を成功させたのか。本連載では、『組織X 「エンゲージメント」日本一3連覇企業が語る、24のメソッド✕事例』(宮本茂、白木俊行著/プレジデント社)から、内容の一部を抜粋・再編集。「普通の人が最高の組織をつくる」ための実践的方法論を紹介する。

 第6回は、「Positioning(戦略策定)」に関するメッセの取り組みを紹介する。

<連載ラインアップ>
第1回 「普通の会社」がなぜ、「エンゲージメント日本一」3連覇を達成できたのか?
第2回 誰でもできる組織変革のフレームワーク「経営の4P」とは
第3回 何のために経営しているのか? 社員が働く意味を見出すための「Philosophyの3原則」とは?
第4回 何のために会社をつくったのか? 新生メッセの「あるべき姿」を導き出した「ロールスイッチ」の思考とは?
第5回 事業と組織は表裏一体、最高の組織づくりに不可欠な事業戦略はどう策定する?
■第6回 メッセはなぜ、東京の「中央線沿線」に店舗を集中させたのか?(本稿)

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Positioning(戦略策定)の事例

■差別性は「近くて広い」

 まず、メッセの「違い(差別性)」は何か。実は、これは最初からあったものではなく、苦渋の経験から「つくり出した違い」でした。かつて北関東に出店していた際、超大手と競合して気づいたことがあります。それは遊技事業が、実は不動産事業であり、「立地が良い」「広い土地を所有している」の2点が、勝負のほとんどを決めるということです。当時、ちょうど北関東の人口が減少してきたこともあり、私たちは東京に店舗を集中させることを決めました。そこで確実に、競合に勝てる良い立地ということで選んだのが「中央線沿線」です。

 遊技事業の場合、大規模な店舗であるほど集客も多く期待できるので、人口密集地である中央線沿線は、特に店舗展開に適していると考えています。そして、それから約10年をかけて、東京の一等地にある広大な土地を取得していきました。

 つまり、メッセの差別性は「東京×広域大規模×一等地」の土地を持っていることなのです。

■独自性は「心地良い」

 メッセの「らしさ(独自性)」とは何か。世の中のいわゆる一流企業と比べても、負けないように伸ばせるものは何かと考えたときに、「素直な社員たち」だと考えました。当社で働く社員は、一流企業の方と比べると「能力」では劣っているかもしれません。しかし、会社の理念をきちんと理解して、それを成し遂げるための行動を、全員が素直に実践してくれているというところに、大きな特徴があります。

 そして、その素直な社員が、目に見える形で世の中へ価値提供できるもの。すなわち、それがメッセの独自性であり、「居心地の良さ(居場所を感じられる)」だったのです。現代はさまざまなものがデジタル化・機械化され、私たちの生活は確実に便利かつ快適になってきています。

 その一方で、他者との接触を極力減らすことを余儀なくされたコロナ禍では、多くの人が「つながり」や「居場所」の大切さを実感されたでしょう。私は、生身の人と触れ合うことに喜びを感じる瞬間をつくっていくことが、人間には自然なことのように思います。だからこそメッセでは、リアルの世界で「居心地の良さ」をお客さまに提供する。抜群に素直な私たちなら、それができると考えています。