ハリウッドにも昔は、ゲーリー・クーパー、ジョン・ウエイン、リチャード・ウィドマーク、カーク・ダグラスらがいた。現在ではトム・クルーズやジョニー・デップやレオナルド・ディカプリオがいて、健闘している。ゲイリー・オールドマンもいい。
世界的俳優はいなくなったが、洋画の娯楽映画は昔に較べて格段におもしろくなったといっていい。一方現在の日本映画の低迷は、俳優たちがテレビにいいように鼻面を引き回されていることである。テレビCMで熱演してもしようがない。
ついでだが、テレビのバカ度は昔も今も相変わらずである。
だが「昔はいいことばかり」なわけはない
もちろん、昔がいいことばかりだった、ということはありえない。
「やっぱり昔はよかった」は、概ね文化(通俗的には娯楽)に関わることである。社会的には断然、現在の方がいいといわざるをえない。
高齢者の書いた本のなかに、明るく楽しい老後、ということを強調するためだろううが、70歳、80歳になった今が人生のなかで一番幸せだ、と書いている人がいる。
わたしは高齢の自分を別段幸せともなんとも思わない。しかしもう満員電車で通勤をしなくていい、会社員の生活をしなくていい、服装は自由でいい、といった意味では、楽になったなとは思う。自由で楽なことが一番なのだ。
東京都知事に立候補した元安芸高田市長の石丸伸二が、古舘伊知郎のユーチューブ番組でこういっていた。
三菱東京UFJ銀行(当時)に入社したとき、石丸はリュックサックを背負っていき、上司から怒られた。だけど、いまでふつうでしょ。時代は変わるんですよ。
そのとおりである。
現在がいいのは、まだ不十分だが、人間関係が昔よりも寛容になったことだろう。
パワハラやセクハラ意識が広まったことで、年齢差別、男女差別が昔よりは減った。ばかなオヤジ社員たちのための社員旅行や「飲み会」が減ったことはいいことだ。公共マナーもよくなった。公共の場での喫煙は激減した。
日本がドイツにGDPで抜かれて4位になった、来年にはインドに抜かれ5位になるといわれている。このことをいかにも一大事のように新聞テレビは報じるが、いまさら騒ぐこともない。とっくの昔に日本は政治的・経済的には二流国になっているのだ。
GDPごときが4位になろうと、5位に落ちようと、われわれの知ったことではない。
そんなことよりも、われわれは気づいていないが、暮らしの細部で、例えばコンビニや店舗や空港などの公共のトイレが清潔できれいだということ、またトイレットペーパーはつねに補充されているということ、などでは世界一かもしれない、ということを知っておくほうが、精神衛生上よっぽどいい。
こういうことも多々ある。スーパーやコンビニでの商品の種類の多さは充実している。電車は世界一の正確さで発着する。落とし物をすればかなりの確率で見つかる。
日本人の美徳は、昔からつづいていることだ。なによりも、治安がよく、国民のあいだに礼儀正しさや気遣いがまだ残っている。こういうことは、世界トップクラスかもしれない、と誇っていいのである。まあわざわざ誇ることもないけど。