- ロシアの「影の船団」に対して、欧州各国が制裁や対抗策を強化している。影の船団とは、ロシアが欧米の制裁を回避し原油を海上輸送するために航行させているタンカー群のことだ。
- 平時なら運航しないような老朽化した船舶を用い、海上輸送で標準的な西側の保険に加入せず、船名や船籍を頻繁に変えるのが特徴だ。
- ウクライナとの戦闘を続けるロシアの重要な資金源になっているほか、老朽化した船が原油流出事故を起こし深刻な環境破壊を引き起こすリスクや、劣悪な労働環境による乗船員の人権侵害などが懸念されている。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
英政府は6月13日、「プーチン大統領の軍事機構を低下させるための」50の追加制裁を発表した*1。
*1:New UK sanctions to crack down on Putin's war machine(GO V.UK)
中でも注目されたのは、ウクライナ侵攻以来、欧米が課してきた原油の海上輸送に対する制裁を回避するためロシアが暗躍させている、いわゆる「影の船団」に対する制裁だ。英国が船舶そのものを対象としたのは、初めてだという。この措置により、これらの船舶は英国の港への入港と、ロシアの石油製品の輸送が禁じられる。
これに加え、英政府はロシアの保険会社「インゴストラフ」も制裁対象とした。同社は「影の船団」の重要な保険提供者となっている。
更に、デンマークのラスムセン外相は17日、ロイター通信の取材に応え、「影の船団」対策に向けバルト海諸国や、欧州連合(EU)加盟国などで作る同盟国グループを招集したと発言。具体的な措置には言及しなかったものの「『影の船団』は国際問題であり、国際的な解決策が必要であるということには幅広いコンセンサスがある」と語った。
駐デンマークロシア大使は「海峡を通過する船舶に制約を課すことは容認できない」と反発している。
「影の船団」は、欧米がロシア政府と軍に流れる資金を削減することが目的で行なってきた制裁を課す中で急増した。原油輸出はロシアにとって、ウクライナとの戦闘における重要な資金源だ。