北朝鮮を訪問せざるを得なくなったプーチン大統領(6月19日平壌で、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

プロローグ/2024年6月度概観

 ロシア(露)近・現代史においてロシアが負けた戦争は2つあります。

 クリミア戦争(1853~56年)とソ連・アフガン戦争(1979年12月~99年2月)です。

 この2つの敗戦に共通している点は開戦者と終戦(敗戦)者が異なることです。

 クリミア戦争は皇帝ニコライ1世が開戦、皇帝アレクサンドル2世が終戦(敗戦)。

 アフガン戦争はブレジネフ書記長が開戦、ゴルバチョフ書記長が終戦(敗戦)。

 この史実から演繹されることは、プーチン・ゼレンスキーがいる限り、終戦の形は見えてこないだろうということになります。

 第三国からの停戦交渉圧力以外、戦争当事国の指導者は敗戦を認めないでしょう。

 ロシア軍が2022年2月24日にウクライナに全面侵攻開始してから6月21日でプーチンのウクライナ侵略戦争は849日目となり、まもなく2年5か月目に入ります。

 露プーチン大統領(71歳)は侵攻開始後2~3日で首都キーウ制圧可能との前提でウクライナに侵攻したので、これは大きな誤算と言えます。

 2023年6月のウクライナ軍による反攻作戦は失敗しました。

 一方、ロシア軍は今年5月に入ると戦線を拡大し、ウクライナ東北部ハルキウ州に侵攻開始。防御態勢の薄いウクライナ軍は意表を突かれた感じですが、反撃しながら戦術的撤退。

 ロシア軍はウクライナ本土に6~7キロ侵攻したものの、ウクライナ軍はハリコフ防衛陣地を死守。戦線は膠着状態に陥っています。

 欧米による兵站補給支援物資が戦線に搬入されれば、ロシア軍に対する防御陣地は強化され、反攻可能になるかもしれません。その場合、ロシア軍の侵攻は失敗に終わる可能性大と筆者は予測します。

 ウクライナ戦争は長期化すればするほどロシア軍に有利になると解説している人もいますが、継戦能力は戦費と兵站補給いかんです。戦争は経済弱体化を招き、プーチン大統領の政権基盤を脅かすことになるでしょう。

 もう一つニュアンスがあります。この戦争はプーチンの侵略戦争であり、ウクライナ軍にとっては祖国防衛戦争になります。戦意は数字に表れない戦力です。

 露プーチン大統領は今年5月7日、第5期目のロシア大統領に就任。任期は2030年までの6年間です。ロシアでは5月14日、新内閣が正式に発足しました。

 一連の儀式を終了したプーチン大統領は5月16日に訪中。プーチン新大統領就任後の初外遊となりましたが、結果として中国訪問は事前の推測通り「習近平の鼻息を仰ぐプーチン訪中」になりました。

 プーチン大統領は6月19日未明平壌到着、同日首脳会談実施。露朝は包括的戦略パートナーシップ条約を調印。

 これは実質、準軍事同盟を意味します。

 ソ連・北朝鮮は1961年、準軍事同盟「友好協力相互援助条約」を締結。1996年に有効期限満了の際、延長せず破棄されました。

 6月19日に調印された包括的戦略パートナーシップは上記「相互援助条約」同様、どちらか一方が軍事侵攻を受けた際、参戦する内容の軍事同盟です。

 格下の北朝鮮を訪問して武器弾薬供給を依頼しなければならないほど、実はプーチン大統領は追い詰められているというのが、今回の訪朝の背景と筆者は理解しております。