「グローバル人材」は転職への躊躇がない

 新卒から7年。転職を2回経験し、今では副業もやっているMさんだが、「これから転職するのは少し気が重い」という。「最初の転職はほぼ新卒みたいな感覚。転職した側の会社からスキルを求められることはなかった。30歳以降の転職はスキルが求められると思うので、カナダでさらに転職ができるかは分からない」と率直に語る。

 今年(2024年)4月からは完全リモートワークになった。始業は午前9時から11時の間にすればよく、8時間勤務と1時間休憩。残業はない。勤務時間も日によって増やしたり減らしたり、調整できる。1カ月の中で定められた勤務時間を守ればいい。副業をやる余裕もたっぷりある。「もう少し給料が高かったら嬉しいけど、現状にはある程度満足している」という。

 Mさんに「今の仕事や職場に満足していない人に転職を勧めますか?」と聞いてみた。Mさんは「難しいところ。転職をしたけどやっぱり希望に合わない人とか、メンタルの不調を抱えてしまった友人もいる。会社って入ってみないと分からないから」という回答だった。

 Mさんのカナダでの生活はとても幸せそうだ。週末は自然豊かな公園で散歩を楽しむなど、ゆったりとした生活を過ごしている。「私は転職してよかったと思う。これまでの選択に後悔はない」というMさんの言葉には充実感があふれていた。

Mさんのカナダでの自宅近くの公園

 Mさんのケースから何を学べるだろうか。

 まず、採用した会社の側から考えてみる。会社は、「グローバル人材」は転職への躊躇がないことをきちんと理解しておく必要があるだろう。海外展開をする上でグローバル人材は重宝されるだろうが、グローバル人材は価値観の面でもグローバルである。Mさんのようにフラットな人間関係に慣れている場合、タテ社会を重視する会社文化が肌に合わないこともある。英語能力があれば転職も容易だ。そのような人材であることを承知しておくべきだし、グローバル人材が存分に能力を発揮できる環境をいかに整備するかが問われるだろう。

 働く側から見れば、不平不満がある会社を早々に見限り、新卒に近い年齢のうちに転職することは賢い選択に見える。「石の上にも三年」的に、つらい仕事を我慢して働き続けることだけが美徳ではない。Mさんの体験談を聞くと、さっさと転職してしまうのも個人の選択肢としてあってよいし、人生の幸せにつながるのだとうなずかされるのであった。