法令遵守のインセンティブと罰則(サンクション)の不均衡

 これについて、ぼくが安田さんと考えてみたいのは、政治における「法令遵守のインセンティブ」についてです。

 ぼくが直感的に感じるのは、「法令遵守のインセンティブが少なすぎる」ということです。変な話ですが、いうまでもなく法令遵守は当然です。ところが、遵守してもわかりやすいいいことはなく、遵守に失敗したときのみ罰則(サンクション)があるといってもよいでしょう。

日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(西田 亮介・安田 洋祐著、日本実業出版社)
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 たとえば、公職選挙法と政治資金規正法において有罪の判決を受けると、公民権停止の処分がついてきます。

 公民権が5年また10年の停止になる。つまり、これだけの期間選挙に立候補できないということは、事実上、政治家生命が終わるということです。

 広島で起きた河井夫妻選挙違反事件*1は記憶に新しいですが、河井案里氏と夫で元法務大臣の河井克行氏はそれぞれ有罪で公民権停止の処分を受けています。所定の期間、選挙に立候補ができません。

*1:2019年、第25回参議院議員通常選挙中

 そういう状況下では、「立証を困難にするために物証を残さない」という方向に政治家が動いてしまうようにも考えられます。