速度大幅超過でも直進安定性の高いスポーツカーなら危険運転じゃない?

 危険運転の法解釈については、これまでにもたびたび議論されている。速度超過による事故の問題については、2023年10月28日、衆議院内閣委員会で取り上げられている。

 この日、緒方林太郎衆議院議員は、大分で起こった194キロ死亡事故を事例として挙げ、法務省にこう質問した。

「一般道で、超高速運転する行為というのは、危険運転致死罪の『その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為』の構成要件に当たらないのでしょうか? どんなにスピードを出していても、前を正視してハンドルをきちんと握っていれば危険運転に当たらないと、そういうことなのですか?」

 これに対して、法務副大臣の門山宏哲氏は、「あくまでも一般論として」という前提で次のように答弁している。

「『進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為』とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状況で、自車を走行させるということを意味しているところでございますが、この要件に該当するか否かにつきましては、個別の事案ごとに証拠によって認められる事実、例えば、車両の構造性能、具体的な道路の状況、すなわち、カーブ、道幅など諸般の事情を総合的に考慮して判断されるものと承知しております」

*上記国会中継については、「衆議院インターネット審議中継」のサイト(発言者/緒方林太郎議員をクリック)から視聴可能。

 この答弁で私が注目するのは、副大臣答弁の中の「車両の構造性能」という言葉だ。つまり、かなりの高速度であっても、直進安定性の高いスポーツカーであれば直線道路をまっすぐに走行でき、結果的に「危険運転」とはみなされない可能性があるのではないか。

 ちなみに、冒頭で取り上げた事故の加害車両はフェラーリ、大分はBMW、そして、昨年レポートした現職刑事による75キロオーバー死亡事故(過失で処理)は、メルセデスベンツだった。

<刑事が一般道75キロオーバーで死亡事故、果たしてこれは「過失」なのか 片側一車線の県道を時速115キロ、遺族は「被告にはもう会いたくない」>(JBpress 2023.4.5)

 これら高級輸入車のスピードメーターは、いずれも250キロ以上刻まれており、その速度でも十分に走行できるポテンシャルを備えている。直線であれば、たとえ時速200キロでも、「進行を制御することが困難な高速度」とはいえない可能性が大だ。だからといって、日本の一般公道で、これを「危険」とみなさない解釈は適正なのだろうか。