ハマスのガザ地区トップ、シンワル氏の狙いとは

 シンワル氏は昨秋のハマスによるイスラエル襲撃の「首謀者」と目され、今年5月に国際刑事裁判所(ICC)が、イスラエルのネタニヤフ首相などと共に、戦争犯罪の疑いで逮捕状請求を発表した一人だ。

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 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は6月10日、シンワル氏のものと見られる最近の発言を複数報じている。発言は、停戦交渉担当者らに送られた数十件のメッセージの内容だという。

 これらによるとイスラエル人はもちろんのこと、同胞であるパレスチナ人の命でさえ「イスラエル消滅」という目的のためには犠牲をいとわない、シンワル氏の冷徹な人物像が浮き彫りにされている*2

*2Gaza Chief’s Brutal Calculation: Civilian Bloodshed Will Help Hamas(THE WALL STREET JOURNAL)

 パレスチナ自治区ガザの保健省によれば、これまでにガザでは3万7000人以上が死亡したとされ、その多くが先の4歳男児などを含む民間人と見られている。WSJは、シンワル氏がこの膨大な数の犠牲者に関し、かつてアルジェリアがフランスからの独立を目指した戦争で失われた人命を引き合いに「これらは必要な犠牲だ」と切り捨てたと報じている。

民間人の犠牲をシンワル氏は「価値ある代償」と言ったそうだが…(写真:AP/アフロ)

 シンワル氏は昨秋のイスラエルへの奇襲攻撃以来、ガザ地区に潜伏していると見られている。米ニューヨーク・タイムズ紙は11日、当局筋の情報として、シンワル氏がハマスによるイスラエルへの攻撃が同国から軍事的な反応を引き起こし、民間人に多数の犠牲が出ることを承知の上で「価値ある代償」であると判断したと報じている。

 同紙はさらにシンワル氏の意図を分析してきた米・イスラエル両国の諜報機関の話として、シンワル氏の動機はイスラエルへの復讐と弱体化にあり、パレスチナ市民の安全やパレスチナ国家樹立などは「二の次」のようだとしている。