少子高齢化対策に「マッチングアプリ開発」の笑止千万

 少子高齢化問題も避けて通れないテーマだ。

 東京都の人口に関するデータから、出生数と高齢化に関するものをピックアップした。

① 出生数8万6347人(2023年)→8年連続減少
② 合計特殊出生率*注1.04(2023年/全国1.20)→7年連続低下
③ 高齢者人口311万4000人(2023年9月)→前年比1000人増、高齢化率23.5%
④ 75歳以上176万1000人(同)→過去最高
*注:15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。「コーホート合計特殊出生率」と「期間合計特殊出生率」の二通りがあり、一般にどちらも「一人の女性が一生の間に産む子供の数」と解釈される。

 一刻も早く実効性のある対策を講じないと東京の明日はない。それなのに東京都がいま少子化対策の一環として進めているのが、マッチングアプリの開発というから仰天した。

「AIマッチングシステム」という取り組みで、〈TOKYOふたりSTORY〉なんてキャッチコピーが付いている。結婚を希望する18歳以上の都内在住・在勤・在学の独身者を対象に、本人確認書類、独身証明書、年収確認書類などを提出して登録。AIによる紹介で相手と会ったり、お見合いができるようになるというもので、令和6年度の早い時期の本格稼働を目指しているという。

 ちょっと違うんじゃないか。東京都の人口移動報告を見ると、20代は8万2000人以上の転入超過となっている。男女共に若者が全国から集まっているのだ。それでも結婚や出産に結びついていかないのは、最大の問題が「出会い」ではなく、生活環境、雇用環境、収入といった社会的な条件にあるからだ。

 そこの対策に手を付けないで年間3億円もの予算をアプリ開発につぎ込んだところで効果はしれている。高校授業料の実質無償化や第2子の保育料無償化など子育て支援に向けた多少の前進は見られるが、抜本的な少子化対策には程遠い。知事選候補者の公約からどんなアイデアが出てくるだろうか。

都庁プロジェクションマッピング税金48.5億円が投入された都庁プロジェクションマッピング(写真:つのだよしお/アフロ)