(写真:AFLO)(写真:AFLO)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 経済・金融音痴のわたしは、2023年後半から高橋洋一氏の著作を読み始めた。かれが中学生のとき、東大入試の数学問題は軽く解けたというその神童ぶりに驚嘆し、経済・金融・会計に関する切れのいい時事解説には羨望を覚えるほどである。

 社会科学系や文化系の人のなかには、経済はまったくわからんよ、と自慢する人がたまにいるが、わたしは恥と思ってきた(しかし本を読んでも、わかることはほんのすこし)。

 それ以来、高橋氏のYouTubeも見るようにもなった。その著作やYouTubeを見ていて気付くことは、国益よりも省益を優先する財務省のやり口批判の解説が多いことである。かれが日本のガンは財務省、と考えていることはあきらかだ。

 わたしの知る限り、財務省批判をしているのは高橋洋一氏ひとりである。森永卓郎氏に「財務省に唯一洗脳されなかった財務官僚」といわれたように、かれは財務省から「3回殺しても殺したりない」といわれるほど憎まれた男なのだ。

「財務省が撒いた餌に食いつく番組」

 今月のYouTubeでも少なくとも3回、財務省関連のことを語っている。

 一つ目は、1019回目の「酷いサンモニの円安解説 財務省&日銀の走狗だ」である。

「サンモニ」とはよく知られているように、TBSの「サンデーモーニング」という日曜朝の番組のことである。長年、関口宏氏が司会をしていたが、今年4月から膳場貴子氏に変わった。わたしは昔すこし見ていたが、いまはほとんど見ていない。

 その回で高橋氏は、円安対策として為替介入するのに、200兆円弱の有価証券と20兆円の預金の二つがあり、財務省は預金の20兆円しか介入できないというが、それはちがうといっている。債券と預金では債券のほうが解約しやすいのだが、財務省はそれをしたくないためにウソをいっているというのだ。

 日本の対GDP比の外貨準備高はG7のなかでも断トツに多い。他国はわずか数パーセントだが、日本だけが30%弱と突出して高い。もし財務省がそれを全部売れば数十兆円の売却益が出て、2年間は消費税なしにすることができる。

 そのような議論が起こることを避けるために、財務省は預金でしか介入できないといっているのである。また財務省は外債の保管費を金融機関に払っている。つまり天下りのための餌を金融機関に与えていて、持ちつ持たれつの関係なのだ。

 しかしこんなことは日本のテレビでは絶対にいえない。高橋氏は、毎週土曜の大阪朝日放送テレビには出ているが、こういうことをそこでしゃべった。同出演者のホンコンさんから、「もっと地上波でいったら」といわれたが「言えるわけない」というのである。