まただれかに、「高橋さんはサンモニに出ればいいのに」といわれたが、出られるわけがない。スポンサーに金融機関がいるところは大変なのだ。財務省が飛んできて、ああいうやつを出すなと叱られるにきまっているという。

 だから現在のサンモニは財務省が考えているとおりのことをいうだけである。「あれは財務省が撒いた餌に食いつく番組です」

すべての情報を精査することはできないが

 二つ目は1027回の「まだ言うか?! 国の借金が過去最大 NHKよ…」である。

 国の借金が1297兆円余、8年連続で過去最大を更新、財政厳しく、とNHKが報じた。これは財務省理財局が3か月に1回、財務省記者クラブにある投げ込みボックスに係員が投げ込んだ資料を、NHKがただ仰々しく報じているだけ、と高橋氏はいっている。

 もう国の借金だけを云々して危機感を煽るというのは無意味、と高橋氏が指摘して以来、わたしもこういう数字には驚かされなくなった。「パブリックセクターバランスシート=統合政府」という観点で見ると、負債の片方に同等の資産があり、何ら問題ではないのである。

 そういうことも知らないとき、わたしはそんなに借金があって日本は大丈夫なのか、と思っていた。テレビは信頼できるメディアだ、と信じている人はまだ多い(わたしがそうだった)。そういう人を騙すことは、赤子の手をひねるよりも簡単なのである。

 じつをいえば、高橋氏の解説が正しいのかそうではないのか、をわたしは知らない。かれの思考を信用しているだけである。

 情報リテラシー(情報を適切に判断し理解する能力)を高めよ、といわれる。まあそういわれば、そのとおりではあろう。だがすべてのことに対して精査することなど、普通の人間はしない。だいたいは自分の経験と勘でやるしかないのである。

 詐欺の手口はあふれている。テレビでは誇大な宣伝広告ばかりである。有名人に弱い人間の心理をついた、有名人なりすまし投資詐欺にも引っかかる。

 宣伝広告だけではない。無知につけこまれ、ガセネタを信じ込まされてしまう。「大谷に全米熱狂」などのマスコミの誇大表現もそうだ。全米どころか大谷を知っている人間のほうが少ないのだ。血圧が130を超えたらこのお茶を飲め、というのも大きなお世話である。

 この人間は信用できるか否か、本物か否かの、人を見る目を養う人間リテラシーも必要だ。しかしこれもいうは易し、行うは難しである。基本、テレビも人も最初は信じない、というところからはじめるほうが無難であろう。