公正な対価が支払われていないと学生が反発

 加盟大学はこうした放映権料から分配金を受け取り、年間100億円以上の予算を持つ大学もある。

 笹川スポーツ財団のレポート『NCAA所属大学におけるAthletic Departmentの財務』(執筆者、相澤くるみ氏)によれば、NCAAの収支報告書では、2015年に米カレッジフットボールの1部最上位カテゴリー「FBS」に所属する125大学の収入は、中央値で約6400万ドル(約77億円)だったという。これは。チケット販売やNCAAなどからの分配金、寄付金、放映権料、スポンサー料、大学からの補助金などを合わせたものだ。

 ところが、NCAAでは、スポーツの主役である学生アスリートがどれほど活躍し、人気が出たとしても、教育に関わる奨学金以外に報酬を得ることができなかった。それだけでなく、NILを活用して収入を得た場合には競技参加資格を失うルールに縛られてきた。

 NCAAは1906年に創設(10年にNCAAに改称)され、大学や競技を横断的に統括する組織として、大学スポーツ全体の発展を支えてきた。この中で、学生の本分は勉強とし、競技においてはアマチュアリズムを、さらに学業との両立を求めてきたからだ。

 このため、成績が基準を下回ると部活への参加が制限されるなどの措置が講じられる。

 一方で、NCAAや加盟大学が莫大な収益を挙げていることや、学生アスリートに公正な対価が還元されていない現状に対し、近年になって学生側が反発を強めてきた。その結果、訴訟が相次ぎ、2019年にはカリフォルニア州で学生アスリートがNILによる報酬を受け取ることを認める法律が可決された。

 その後、他の州にもこうした動きが広がり、NCAAは21年になり、学生アスリートが企業などとスポンサー契約を結ぶことやCM出演、NILによる報酬を得ることの解禁に踏み切った。