- 長らくアマチュアリズムにこだわってきた米国の大学スポーツ界が商業化に舵を切っている。
- 米プロスポーツと肩を並べる市場規模がありながら、選手への還元が制限されてきたことに学生側が反発し、方針転換が進む。
- 日本の高校生で優れたアスリートが米大で高額報酬を得られる可能性に引き寄せられ、人材が流出する懸念もある。(JBpress)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
学生のアマチュアリズムを堅持してきた米国の大学スポーツ界が、人気アスリートの肖像権などを巡って大きな変革を迎えている。
学生個人の持つName(名前)、Image(画像・映像)、Likeness(肖像権)の頭文字を組み合わせた「NIL」について、学生側が商業利用を求める訴訟が相次いでいるのだ。これを受けて、全米大学体育協会(NCAA)が商業利用を容認するだけでなく、放映権料の学生アスリートへの分配にも舵を切る事態となってきた。
スター選手は場合によっては、プロ以上の金銭を受け取ることが可能となり、学生とプロの「垣根」にも変化が生じる事態とみる向きもある。日本から留学して活躍する選手への影響も大きくなる可能性がある。
現状では留学生はビザの関係で就労が制限され、NILの対価を受け取る対象外となっている。だが、米西海岸の名門、スタンフォード大でアメリカンフットボールのコーチを務める河田剛氏は、NILの商業利用が留学生にも容認される動きが広がる可能性は否定できないと指摘する。
そうなった場合には、日本からの留学生もNILを活用したメリットを享受できるようになり、米国への人材流出につながる転換期となる可能性もある。