北朝鮮、軍事偵察衛星の打ち上げ失敗
北朝鮮は5月27日、昨年11月に引き続き、2基目の軍事偵察衛星を軌道に乗せる試みを行ったが、衛星を搭載した新型ロケットの1段目が飛翔途中で空中爆発し失敗に帰した。
北朝鮮の国家航空宇宙技術総局が28日未明、国営の朝鮮中央通信を通じて発表し、日米韓3か国もそれを確認した。
発表によると、5月27日、北朝鮮の北西部、東倉里(トンチャンリ)にある「西海(ソヘ)衛星発射場」から軍事偵察衛星を搭載した新型ロケットが打ち上げられたものの、1段目が空中爆発して失敗したという。
原因については、現時点での結論と断った上で、「新たに開発したエンジンの動作の信頼性に問題があった」とのことで、今後詳しく調べるとしている。
北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げは、昨年(2023)11月以来、4回目である。
1回目の2023年5月は2段目のエンジンに、2回目の8月は3段目にそれぞれ異常が発生し、2度の失敗を経て、ようやく3回目の11月に初めて成功に漕ぎ着けた。
北朝鮮の弾道ミサイル開発は、液体燃料推進方式から固体燃料推進方式へと進めてきた経緯がある。
そのような中、今回の衛星打ち上げを支援するため、これまでに多くのロシアの技術者が北朝鮮を訪問し、エンジンの燃焼実験を繰り返していたと報じられていた(韓国の連合ニュース)。
それが、北朝鮮が「新たに開発した液体酸素と石油エンジンに問題があった」としているエンジンである。
この燃料の組み合わせは、米国のアポロ計画で、1969年に人類を初めて月面に送り込んだ「サターンV」ロケットでも使われ、決して新しいものではないという。
しかし、北朝鮮にとっては全く新しい取組みに相違なく、かなりの困難を伴ったことは想像に難くない。
他方、打ち上げ直後はロケットの噴流がまっすぐ伸びていたものの、途中から噴流が曲がっていたという。
上昇中にロケットの姿勢が制御不能になり地上からの指令で爆発させた可能性があるとして、誘導制御装置の問題を指摘する専門家もいる。
北朝鮮は、年内に3基の軍事偵察衛星を追加で打ち上げる計画を明らかにしている。
しかし、いずれが原因であったとしても、その解明と欠陥の是正・克服には数か月の時間を要すると見られ、今後の打ち上げ計画に影響が出るのは否定できない。
他方、厳重な秘密主義の北朝鮮が、今回に限って、失敗直後に「新たに開発したエンジンの動作の信頼性に問題があった」と国際社会に向けて発表したことには驚かされる。
その含意には、例えば、ロシアの技術支援に対する間接的クレームと支援継続の督促など、何らかの思惑が込められているものと見ることができよう。
また、北朝鮮は国内向けのメディアでは軍事偵察衛星の打ち上げ予告や失敗を伝えていない。
独裁者・金正恩総書記の肝煎りの国家的事業だけに、その権威や威厳を傷つけることが一切許されない強権支配下の同国の実情の表れであろう。