他のシェア型書店の棚主だった時代に、1冊1冊をスリップ(販売前の書籍に挟む短冊状の伝票) で管理しているのを見て、「自分だったらデジタルを活かしてこうするのに」と考えていたという。

 業界の課題はすでに30年近く指摘され続けてきたのに、本質的な改革ができなかったのは、由井のように他業界からの参入者が少なく、自分たちのビジネスモデルに固執してきたことと無縁ではない。

 全国に広がりつつあるシェア型書店を「シェア型」と命名したのも、実は業界の出身者ではない。

楽天で働きながら無人書店を開店

 東京・吉祥寺駅から徒歩で数分繁華街を歩くと、古いビルの地下にその店はあった。中西功(45)が運営する「BOOK MANSION(ブックマンション)」だ。2019年7月の開業だが、それまで中西は楽天でEC事業のコンサルタントとして長く働いていた。

古いビルの地下にあるブックマンション

 もともと本好きで、仕事の資料としても本を買い込んでいた中西は、家にある大量の本をなんとかして、と妻から言われていた。

「だったら本屋をやってみようかと。ただ、楽天の仕事も好きだったので、辞めずにできる方法はないかと考えたのが、無人書店でした」

店内に掲げたブックマンションの「説明書」