- スロバキアのフィツォ首相を銃撃した犯人の動機が、政府の改革への不満にあったことが明らかになってきた。
- フィツォ首相はウクライナ支援に反対して政権の座に返り咲いた人物。汚職捜査を担う特別検察局を廃止したほか、公共放送を廃止して国営に置き換える方針を打ち出すなど物議が絶えない。
- 欧州連合(EU)加盟国ながらロシア寄りの立場で、親ヨーロッパ派と親ロシア派の間で分断がより深まっているとの指摘もある。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
5月15日、スロバキア中部のハンドロバで銃撃され、重傷を負った同国のフィツォ首相(59)は生命の危機を脱したものの、翌16日も依然深刻な容体と伝えられた。暗殺未遂と見られている。
フィツォ首相は政府の会議出席後、集まっていた少数の地元支持者と握手を交わそうとした際、銃撃された。犯人は至近距離から銃弾5発を発射し、フィツォ氏は腹部や腕などに銃弾を受けた。病院関係者によれば、手術後の容体は安定しているものの未だ重篤な状態で、集中治療室に留まるという。
4月に同国次期大統領に選出されたペレグリニ氏によれば、銃創がわずかに数ミリでもずれていれば、首相の命はなかったという。
現場で取り押さえられた犯人は71歳の男で、地元メディアによると男は作家で詩人であり、また活動家でもあるという。会見したスロバキアの内務相によると男は単独犯で、取り調べに対し政府の改革に見解の相違を感じての犯行だったと話している。過激派組織には属していない。一方、このところ頻発していた平和的な反政府デモには参加していたとされている。
男は16日、殺人未遂で起訴された。地元の報道では、終身刑の可能性が指摘されている。
現状、いち市民と見られている男が、白昼堂々現職の首相を銃撃するという凶行に駆り立てた政府の「改革」とは何であったのか。内相はそれが「特別検察局の廃止の決定、ウクライナへの軍事援助の停止の決定、公共放送の改革、そして司法評議会長官の解任」であると述べている。
フィツォ氏はどのような人物なのか。