チャットボットの指示通りの対応をしたのにこの結果

 2022年11月、カナダのブリティッシュコロンビア州に住むジェイク・モファットという人物が、バンクーバーとトロント間の航空券を購入しようとしていた。遠方に住む祖母が急に亡くなり、その葬儀に参列することになったのである。

 そこで彼は、カナダ最大手の航空会社であるエア・カナダのホームページを開き、そこに設けられていたチャットボットに忌引運賃規定について問い合わせをした。エア・カナダは親族の葬儀に参加する利用者に対し、運賃を割り引く制度を設けていたためだ。

 チャットボットは彼の質問に対し、「チケットの発券から90日以内に必要な書類を提出すれば、運賃の一部を払い戻す」と回答。ジェイクはそれを信じて、まずは翌日のバンクーバー発トロント行きのチケットを購入。さらに数日後、帰りの航空券も購入した。

 そして、帰宅後すぐに要求された書類をエア・カナダに提出したが、ジェイクの申請を受けたエア・カナダは、「割引は旅行開始前に申請して取得しなければならず、旅行が完了した後の遺族割引は行わない」との方針を示し、この申請を却下した。

 要はチャットボットの回答が間違っていたのだが、エア・カナダの担当者は、チャットボットが誤解を招いたことは認めたものの、チャットボットが遺族規定へのリンクを提供していたため、正しい規定を知ることができたはずだと主張した。

 ジェイクはこの方針に納得しなかった。エア・カナダ自体が提供しているチャットボットに嘘をつかれたのに、申請を拒否されたのだから当然だろう。エア・カナダは謝罪の証として、200ドル相当の旅行用クレジットを提供することを提案したが、彼はその受け取りも拒否し、民事訴訟を起こした。

 結果はジェイクの勝訴。2024年4月に下された判決の中で、裁判官は「チャットボットもエア・カナダのウェブサイトの一部であり、同社はウェブサイト上のすべての情報に責任を負うべきである」との見解を示した。

Airline Blames Passenger for Believing the Information on Its Website(Fodor’sTravel)

 また、ジェイクが提出した証拠に基づき、エア・カナダに対して、返金額に加えて利息と訴訟費用も支払うことが命じられた。その額は合計で650.88カナダドル、日本円にして約7万4000円だった。