落語「半分垢」に学ぶ価値観の差

■「半分垢」のあらすじ

 江戸相撲から帰って来た上方の力士のもとへ、久しぶりに顔が見たいと町内の知人がやって来ます。

「関取は大きくなったかい?」

 そう聞かれたおかみさんは、ちょっとからかってやろうと「牛を踏み潰すほど大きくなりました」などと大袈裟なことを言って驚かせ、帰らせてしまいます。

 奥から出てきた関取が、おかみさんをいさめます。

「江戸から帰りる途中の三島の宿で、日本一の富士山の大きな姿を見て宿の女中に、『朝夕、雲の上の大きな富士山が見られてねえさんたちは果報者だ』と言うと、『朝夕見ているとさほど大きく見えません。大きく見えても半分は雪でございます』と謙遜した。それを聞いてかえって富士山が大きく見えた。『卑下も自慢』とはこういうことだ」

 これを聞いたおかみさん、次にやってきた取り巻きが

「そんなに大きくなった関取を見てみたい」

 と言うと、今度は謙遜をしようと

「関取はあぶら虫のように小さくなって帰ってきました」

 などと極端なことを言って、これまた驚かせます。

 あきれた関取が大声をあげて奥から出てきます。それを見て

「大きくなってるじゃないか」

 とびっくりする取り巻き。

 これにおかみさんはこう一言。

「朝夕見ていると、そんなに大きく見えません。大きく見えても、半分は垢でございます」

 日本人の「謙遜」「惻隠(そくいん)」というメンタリティーの行きすぎを笑う短いネタですが、今回の富士山ローソン騒動につながる「匂い」を感じずにはいられません。