「日本人にはないセンス」

 新型コロナウイルスに関する各種制限が解除され、今年に入って人の移動が本格的に回復しています。昨今の円安で多くの観光地は訪日観光客でごった返し、国内に住む日本人でもコロナ禍でまともな旅行ができなかった鬱憤(うっぷん)を晴らすかの如く「リベンジ旅行」が急増しているとか。

 そうしたなか、世界に名だたる景勝地である富士山とその周辺に、人がわんさか集まってくるのは、ある意味当然のことではあります。さぞかし、地元の方々は「オーバーツーリズム」と「景気回復」との間で板挟みになっていることでしょう。

 そんな「富士山ローソン」問題に関して、アルピニストの野口健さんがSNSのXで興味深い意見を発信しています。

「もう、富士山麓のローソンはみな、ナチャラルローソンにすればあのアホみたいな騒動はなくなるのかな。それにしても我々日本人には全く理解できないセンス。センスも多様性ですから、人それぞれって事なのでしょうが」

 ポイントはおそらく、「日本人には全く理解できないセンス」というところでしょう。確かに、「ローソンの屋根に富士山が乗っかっている」構図は言われてみれば「おもしろいね」となるかもしれないものの、写真を撮りに観光客が殺到するほどのものかというと、日々ローソンも富士山も見慣れている我々日本人にとっては、いまひとつピンとこない感覚ともいえましょう。

【写真16枚】「富士山×コンビニ」、ローソンのほかセブン-イレブンやファミリーマートも

「黒幕」を設置することの是非に関してはここで問うつもりなどありません。「黒幕を設置せざるを得なくなるまで」に追い詰められてしまった現地の皆様の苦労を思うと、外野がとやかく言うことは控えたいと思います。

 ただ、はっきりしたのは、洋の東西を改めて超えてしまう富士山の底知れぬ魅力でしょうか。

 談志は「富士山と桜とコメの飯が好きな奴が日本に集まった。選挙違反の好きな奴が千葉県に集まった」とよく言っていましたが、インスタなどを通じて世界への発信が可能な現代、それが露呈したということなのでしょう。

 富士山といえば、「半分垢(あか)」という落語があります。