富士山ローソンの教訓を生かす

 富士山ローソン騒動は、似たような事象が観光資源に恵まれた日本列島ならどこでも起きかねないことを示していると思います。先ほど紹介した野口さんの意見のように、富士山とローソンの組み合わせに魅力を感じるのは、「日本人にはない感性」かもしれません。だとすれば、増え続ける訪日外国人が「日本人が見落としている何気ない風景の中に、新たな『砂糖醤油』を発見しまくる」可能性があるのでは。

 オーバーツーリズムが各所で懸念されるなか、富士山ローソンのような騒動が起き続けるのは望ましいことではありません。観光客には地域住民への配慮を心してもらいたいものです。

 その一方で、富士山ローソン的発想を逆手に取り、新たな観光スポットを先回りして発掘・開発する価値もあるかもしれません。こうして発掘される新たな観光スポットについては、今回の黒幕による目隠しのような「幕引き」にならないように、大量の観光客の来訪を想定し地元住民と充分なコンセンサスを得ておくなど、事前の対策が必要なのは言うまでもありません。

 今回の富士山ローソン騒動を、これからのオーバーツーリズムの課題を克服する教訓にしていきたいものです。

【写真16枚】「富士山×コンビニ」、ローソンのほかセブン-イレブンやファミリーマートも

 それにしても、この騒動、やはり「真の黒幕」は「過度の円安」だったというオチではありました(笑)。観光客、地元の皆様にとって、円満なる着地点を見出せることを、いち落語家として心よりお祈り申し上げます。

 そんな私も出演します映画「碁盤切り」(草彅剛主演)、17日より公開です。何とぞよろしくお願いします。

立川談慶(たてかわ・だんけい) 落語家。立川流真打ち。
1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学経済学部でマルクス経済学を専攻。卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。二つ目昇進を機に2000年、「立川談慶」を命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打ちとなる。著書に『教養としての落語』(サンマーク出版)、『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(日本実業出版社)、『いつも同じお題なのに、なぜ落語家の話は面白いのか』(大和書房)、『大事なことはすべて立川談志に教わった』(ベストセラーズ)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)、『落語で資本論 世知辛い資本主義社会のいなし方』など多数の“本書く派”落語家にして、ベンチプレスで100㎏を挙上する怪力。