その後、「FOCUS」に続けと各出版社は次々に写真週刊誌を創刊した。1984年に「FRIDAY」(講談社)、1985年に「Emma」(文藝春秋)、1986年には「FLASH」(光文社)と「TOUCH」(小学館)がそれぞれ創刊され読者獲得に鎬を削った。

「FOCUS」の躍進に刺激され文藝春秋社が世に送り出した写真週刊誌「Emma」。何でも過激が売りだった。1985年6月創刊されたが、わずか2年ほどで廃刊に

 それはまた、部数を伸ばすためには法律すれすれでスクープを取るという合戦だった。当時現場に揃った各誌のカメラマンは、たわいもない話などしつつもいざ撮影となると皆「我こそは」と一歩も引かない猛者揃いで、その報道合戦の熱気は今では想像も出来ないほど凄かった。全てがtoo muchな時代だった。

 too muchな結果、1986年にはFRIDAY編集部を北野武とその軍団が襲撃するという事件も起こり、また、海外から「パパラッチ」(アメリカやイギリスで執拗に芸能人や王族を追いかけるカメラマンの総称)という言葉が入って来て隠し撮りなどに対する世間の風当たりも厳しくなり、徐々に写真週刊誌ブームも下火になっていったようだ。「Emma」は1987年に、「TOUCH」は1989年に休刊、「FOCUS」も2001年に幕を閉じた。

雑誌全体が斜陽の時代に

 写真週刊誌のブームは既存の週刊誌のグラビアにも影響を与え、1980年代、各誌のグラビアはまさに花盛りだった。お色気路線から政治ネタ、芸能人、事件・事故、国際情勢、と色とりどりの内容だった。

 また、ベテラン記者の地の底を這うような取材は数々の疑惑や社会情勢を浮き彫りにしていった。巷の話題は週刊誌から生まれていたと言っても過言ではない。

 しかし世の中のデジタル化と活字離れの影響もあり売り上げが落ちると、たとえば経費のかさむグラビアが縮小されていったように週刊誌の勢いも衰えていった。いずれの週刊誌も売れ行きは激減していった。

長く新聞社系週刊誌の代表格だった「週刊朝日」。新聞社系週刊誌としてはセンスが良かった。よく健闘し内容も面白かったが、昨年5月に休刊となった

 新聞社系の週刊誌は「週刊朝日」(1922年創刊)「サンデー毎日」(1922年創刊)「週刊読売」(1943年創刊)「週刊サンケイ」(1952年創刊)、と歴史が古い。だが、「週刊読売」は2008年に約10万部に売り上げを落としたことで休刊、「週刊朝日」も2023年、101年の歴史に終止符を打った。

産経新聞社が発行していた週刊誌「週刊サンケイ」。記事内容、センスが今一つで、1988年に大幅リニューアル、現在の「SPA!」に

 1950年代には150万部を売り上げていたというこの老舗週刊誌も時代の流れに逆らうことは出来なかった。「週刊朝日」の巻末の山藤章二氏の社会風刺イラストは何かと物議を醸したが面白く、毎週楽しみにしていたものだ。

 朝日といえば1959年創刊の「朝日ジャーナル」も懐かしい。70年前後には学生運動に共感するような特集を組んで全共闘世代の支持を集めていたが、赤瀬川源平氏の「アカイ/アカイ/アサヒ/アサヒ」「朝日は赤くなければ朝日ではないのだ」という朝日新聞社章のパロディー作品を掲載し、さすがに当該誌は自主回収となった。確かその号の表紙はピンク色の背景に女性の裸だった。現代なら完全にアウトだろう。ちなみに書店でその斬新な表紙を見た私はすぐさま購入した。そんな愉快な「朝日ジャーナル」も1992年に休刊となった。