対面での接触が減ったことによる影響

──著者は、現代のティーンエイジャーが、過去に比べて恋愛や性関係、子どもだけで集う機会、対面で顔を合わせる機会が少なくなっていることを指摘しています。こうした変化はトランスジェンダー・ブームとどのように関係があるのでしょうか?

岩波:対面での接触が減ることで、こういった方向に傾きやすくなると思います。対面コミュニケーションの代替としてSNSがありますが、SNSは双方向に見えて、双方向ではないことが多い。SNSでは支配的な意見に同調することが、暗に求められやすい。

 本書でもトランスジェンダーのインフルエンサーの影響について言及されていますが、カリスマがいて、その人が発信するものを日々受け止めるとなると、完全に一方通行です。

──孤独な人が毎日SNSから発信されるかたよった情報ばかりを見て、ネトウヨになっていく構図と似たものがありますね。

岩波:非常に似ていると思います。

──アメリカでは日本より顕著に、LGBTQのムーブメントが政治的なイデオロギーの中に組み込まれており、そのことが性教育をコントロールしようとする潮流となって、問題をより複雑にしているという印象を受けました。

岩波:アメリカでは、性的違和を感じる学生が親に内緒で自分の名前を変えて、男の子の名前を持ちたがる場合、教師がそうした行為を推奨することがあるようです。アメリカの教育界や心理カウンセリング業界に、そうした対応が正しいという潮流があるのだと思います。

 本来であれば、性転換を考える話を生徒とする場合には、まず前提として医学的な診断があって、そこから話をすべきです。でも、今の欧米では、そうした段階が抜け落ちていて、自分がトランスジェンダーだと言ったら、トランスジェンダーになってしまう。

──この本は、日本で出版されたのはつい最近ですが、アメリカでは2020年に出版されています。アメリカの教育や精神医学会の潮流に、一種のブレーキをかけるのではないでしょうか?