トランスジェンダー・ブームにも見られる似た構図

岩波:カウンセラーなどが手を貸すことによって、思春期の女性の不安定な心理がこうした問題を生み出すわけですが、どう解決するべきなのかと問われると簡単ではありません。思春期特有の問題ですから、本人が乗り越えていくしかありません。

 この本のテーマである「トランスジェンダー・ブーム」についても似た構図が存在しています。カウンセラーや教育関係者が、不安定な若い女性をトランスジェンダーに促しているのです。

 もっとも、「偽の記憶事件」の時も、今回の「トランスジェンダー・ブーム」にしてもそうですが、カウンセラー(心理療法家)は悪意を持って対応しているわけではありません。問題の原因を見つけて直したいと考えています。ところが、空回りして間違った原因を見つけてしまう。こうしたカウンセリング業界の問題が背景にあると思います。

──トランスジェンダーであると自認することが解放感や安堵感を感じる要因になったり、トランスジェンダーだとカミングアウトすることで、学校で人気者になれたりするケースが見られると本書には書かれています。

岩波:不安定で、ちょっと冴えない目立たない女の子が、自分がトランスジェンダーだと宣言すると、一躍スターになれる。周りから認められて注目されるわけです。

 そういった状況が、この現象を少なからず後押ししていると思います。今のアメリカでは、トランスジェンダーが人権を尊重するという文脈の中で象徴的な存在になっているのかもしれません。

 周りから認められたい。称賛されたい。自分の存在意義を明らかにしたい。思春期には、そういう思いを誰しも強く持つものです。でも、現実には本人は目立たない小さな存在にすぎない。それが、トランスジェンダーを宣言することで、一気に「逆転」ができてしまうわけです。

 またこれとは別に、周りの友達がトランスジェンダーだから、自分もそうだと思う人もいるかもしれません。SNSも含めて友達との関係性というのは、このブームを形作る大きな要因だと思います。