実は、遊佐被告は少なくともその前年からB子さんと不倫関係にあり、すでに子どもまでつくっていました。検察官によると、離婚成立後にその事実を初めて知ったA子さんは、大変大きなショックを受けたと言います。

 不貞を行い、25年間連れ添った妻を裏切った遊佐被告は「有責配偶者」、つまり離婚原因を作った責任のある配偶者とみなされます。日本では基本的に「有責配偶者からの離婚請求は認めない」とされ、高いハードルが設けられているのですが、彼はそのことを隠して離婚を成立させ、不倫相手とスピード再婚したのです。

「深く考えていなかった…」

 A子さんはその後、警察に相談し、告発状を提出。元夫の行為は「有印私文書偽造・同行使」などに当たるとみた警察は、1年以上にわたって捜査を重ね、今回の逮捕に至りました。もし、A子さんが勇気を出して警察に相談しなければ、本件は事件化されず、そのまま終わっていたでしょう。

 初公判の法廷で、弁護士から「なぜ嘘をついたのか」と問われると、遊佐被告はこう答えました。

「そんなに深く考えていなかった。離婚届を出したことは、役所から連絡がいくのでいずれわかることだと思った……」