一方的に提出された婚姻届・離婚届を取り消すにも多額の弁護士費用が
配偶者に嘘をつき、偽造離婚届を提出するという行為は断じて許されません。しかも、本件の場合は明らかな「有責配偶者」がそれを行っていました。しかし、今の日本では、両当事者の意思や事情を確認されることもなく、偽造された署名によってつくられた書類が、役所の窓口で簡単に受理されてしまいます。これもまた恐ろしい現実です。
仮に、提出された離婚届が偽造されたものだったとしても、取り消しの手続きは容易ではありません。家庭裁判所に離婚の無効の申し立てを行い「無効である」という審判を仰がなければ、取り消すことはできないのです。しかも、その手続きには短くても数カ月、長ければ約1年かかります。
もしその間に、病気や事故、災害などが起こったら、いったいどうなるのでしょう。子どもの親権、養育費、財産の問題など、大問題が起こることは必至です。いったん離婚が成立してしまうと、その時点を境に、何も知らない一方の配偶者は婚姻制度で保証されている法的保護から放り出されてしまうのです。
また、離婚の無効の申し立てには、弁護士費用を含めると約100万円の費用が必要になるといいます。配偶者の裏切りによって精神的なダメージを受け、家庭裁判所に申し立てる気力も、経済力もない場合、そのまま泣き寝入りを強いられている当事者は少なくないのではないでしょうか。