高級バッグをいただいちゃった疑惑

 金夫人が「美魔女」と呼ばれるのは、落ち着き払ったその容貌とは裏腹に、尹大統領就任前後から、さまざまな疑惑の影に包まれてきたからである。それはまるで、タマネギ男・曺国氏を連想させるほどだ。

「美魔女」のイメージを決定づけたのは、30万円ほどするディオール社製の高級カバンを受け取った「賄賂疑惑」だ。授受したのは一昨年の9月だが、それを撮影した動画が昨年拡散した。

尹大統領(右)と金夫人(左)、2023年12月にオランダを訪問した際の王宮で晩餐会(写真:ANP Photo/アフロ)

 この事件は革新系の地上波メディアMBCの記者出身者により仕掛けられた。金夫人は「こんなことやめてください」と言いつつも、まんまとはまってしまったのだ。韓国の贈賄禁止法に抵触する可能性があるのではと大騒ぎになった。

 また、ドイツモータース株価格操作疑惑もある。2009年から3年間、独BMWの韓国公式代理店「ドイツモータース」の株価を当時の代表らが操作し、株価を釣り上げたという事件で、これに金夫人が関与したのではないかと疑われているのだ。

尹大統領(左)と金夫人(右)、2023年8月の韓国「光復節」にて(写真:代表撮影/AP/アフロ)

 この疑惑が持たれるようになったのは、尹大統領が文政権時代に検事総長に指名されて資産が公開されたのがきっかけだった。昨年には一審で判決が出たが、裁判の過程で検察は金夫人への聴取を一度もしていない。今回の選挙では、この点についても野党は一斉に批判を繰り広げていた。

 他にも、税金滞納、経歴詐称、学位論文剽窃など多くの疑惑が取り沙汰されている。これらが選挙で与党の足を引っ張ったとの指摘がある。金夫人も政権への影響を意識してか、昨年12月に尹大統領のオランダ国賓訪問に同行したのを最後に、長く表舞台に姿を現していなかった。

 その状況が4月23日、突然変わった。大統領室で行われたルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領との首脳会談の席に突如現れたと、韓国メディアが一斉に報じたのだ。姿を現したのは、実に130日ぶりであるという。

 金夫人の「再登場」は、何を意味するのだろうか。